大相撲の不祥事が止まらない。

 元横綱朝青龍の知人への暴行は、格闘家が他人に怪我をさせたという話で、傷害事件として重大だった。この件については、警察の処置が甘かったが(即刻逮捕でよかったのではないか)、結局、朝青龍の自主的な引退で幕引きした。処置が後手に回った感があったが、日本相撲協会は世論に押される形で、何とか形を作った。しかし、朝青龍抜きの場所の取り組みは、はっきりいってつまらなかったし、興行的にも痛手だった。「横綱」という、ブランドも中身も最強のはずの商品を適切に管理できなかった日本相撲協会は、ビジネスとして落第だ。

 続いて、昨年名古屋場所の本場所に関係者席(一般に入手が難しい「維持員席」)に暴力団の組員を招いていたことが発覚した。この問題では、木瀬親方が2階級降格と木瀬部屋閉鎖の処分を受けたが、ここで重大なのは、当初、木瀬親方が相手を暴力団組員とは知らなかったと述べ、協会も暴力団との交際を発表していなかったが、その後に木瀬親方が2、3年前まで暴力団関係者と交際していたことを認めたことだ(『毎日新聞』6月14日朝刊)。記事によると、木瀬親方は5月27日の理事会で暴力団との交際を認めていたが、協会はこれを発表しなかったことになる。木瀬親方が後日になって、なぜ暴力団との交際をメディアに認めたのかは分からないが、協会が重大な事実を隠していたことが発覚したのであり、協会の処置は不適切だったと言わざるを得ない。

 加えて、大関琴光喜の賭博問題が週刊誌で報じられ、力士の賭博が問題となった。この件については、協会が力士に賭博への関与を自己申告させて、厳重注意で済ませようとしたが、賭博は犯罪であり、これで済むはずがない。これまでに、65人の力士の賭博への関与と、29人の野球賭博への関与が分かっているが、武蔵川理事長の文部科学省への報告の直後に、これには含まれていなかった大関琴光喜の賭博関与が、琴光喜関自身から発表された。

 木瀬親方、あるいは琴光喜関の、悩んだ末に不正を自分から認める姿は人間的で共感できる面があるが、もちろん、どちらの問題もそれで不問に付すことが出来るような性質のものではない。