10月1日、菅直人首相が国会で所信表明演説をした。私はこれを聴き、翌日新聞に掲載された演説の全文を精読した。

 聴いているときも退屈であったが、活字を読むともっと大変で途中で投げ出したくなった。

 残念ながら、演説が人をひきつけないのだ。そう言えば、代表選挙の最後に、小沢一郎氏と共演した演説もそうであった。それはなぜなのか、いずれ別の機会に考えてみよう。

“官僚作文”でダイナミズムに欠けた
菅首相の「所信表明演説」

 今回の演説は、ところどころに首相の言葉を盛り込んでいるが、素地は明らかに官僚の作文だ。用語も言いまわしも官僚が書いたことを示している。

 施政方針演説ならともかく、所信表明演説は首相が自分で書かねばならない。「所信」が借り物では、首相の熱意が伝わらないからだ。少なくとも、自分でタタキ台の草稿を書いて、それを官僚が、具体的な数字や事実関係についてチェックすればよい。

 さて、演説は、官僚作文らしくきわめて体系的に構成されている。それ故に平板で説得力に欠けている。

 やはり「所信表明」なのだから、直面する重要案件を冒頭で述べたほうがよかった。具体的な案件を具体的に述べる過程で、自分の政治に対する基本的な考え方が滲み出れば一級の所信表明になる。