「もう疲れすぎて家事なんてイヤ」「料理がめんどくさすぎて死にそう」――そんな悩める人たちにおすすめなのが「はじめて楽しく料理ができた!」「感動した!」「もう献立に迷わない!」と絶賛されている『厨房から台所へ』と志麻さん初の著書『志麻さんのプレミアムな作りおき』だ。特に『厨房から台所へ』は新聞書評で東大教授が絶賛。志麻さんの手にかかると、冷蔵庫にある食材が、ふだん食べられないプロのレシピに大変身。まさに魔法使いだ。これさえ覚えておけば、平日多忙なお父さんお母さんも、尊敬の眼差しを浴びるかもしれない。3時間で15品以上作るという志麻さん。今回は「涙が止まらなかった」と話題の『厨房から台所へ』の中から、簡単なのに満足度の高い一品を志麻さん自ら紹介する。(構成:寺田庸二、レシピ撮影:三木麻奈、著者撮影:難波雄史 初出:2019年4月21日付け記事を一部修正し掲載)

私がフランス人に一番驚いたこと
フランス料理には、堅苦しい、難しいというイメージを持っている人もたくさんいると思います。
確かに、レストランの料理は、材料や調理、細かいところまでこだわり、洗練された料理ですし、家庭では味わうことのできないおいしさや感動を与えてくれます。
一方で、フランス料理には違った一面もあります。
私がフランス人と関わってきて一番驚いたことは、あまり外食をしないということでした。
彼らにとって家で食べる食事の時間は日々の楽しみの一つですし、休日もどこかに出かけるというよりも、友達や家族を家に招き時間をかけて食事を楽しみます。
私も何度もフランス人たちと食事をしましたが、会話が絶えることなく、あっという間に時間が過ぎていくのはとても不思議な感覚でした。
肝心の料理はと言えば、意外にも簡単につくったものばかり。
乾燥のプルーンにベーコンを巻いてオーブンでさっと焼いたものはおつまみの定番ですし、オーブンで焼いただけの塊肉にゆでてバターと絡めたインゲンなどの野菜が添えてあるだけだったり、買ってきたハムやリエットが並んだりということもよくあります。
大切なのは、食べる時間を楽しむということ。
簡単にできるおすすめの一品とは?
フランス料理の手の込んだ洗練されたイメージとは裏腹に、家庭ではこんなに簡単に、楽しく食事を楽しむ文化があることを知って、私はますますフランスが、フランス料理が、フランス人が好きになっていったのです。
「鴨とオリーブ」もそんな家庭で簡単に作れる料理の一つで、実際フランス人に招かれたときにつくってもらった思い出の料理です。

『厨房から台所へ』では、日本では手に入りにくい鴨肉の代わりに「鶏肉」を使っていますが、つくり方はとても簡単です。
塩・こしょうした鶏肉をさっと焼いて色づけ、少量の白ワインとオリーブで煮込むだけ。
鴨の代わりに鶏肉で、白ワインがなければお酒で、オリーブがなければプラムやアプリコットなどの甘酸っぱいフルーツで代用したりしてもいいのです。
つくる時間より、
食べる時間を大切に
気軽に、あるもので、簡単に、そして楽しくつくれる。
これが家庭料理のよさなのだと思います。
そして繰り返しつくることで、自分なりのこだわりを見つけることができます。
フランス人たちは、女性も男性も料理にこだわりを持っている人が多いです。
自分の意見を曲げない頑固な彼らは、料理のつくり方で何時間も盛り上がっていることもよくあります。
材料もつくり方も複雑で難しい料理よりも、簡単で、自分なりにアレンジできる料理だからこそ、自信をもって食べてもらえるのではないかと思います。
つくる時間よりも、食べる時間を大切に。
これは私がフランス人から教わった大切な言葉ですが、簡単につくるということは手を抜いていることとは違います。
簡単につくるからおいしくないということもないのです。
簡単に楽しくつくって、その先の「楽しく食べる」ということが、家庭料理には大切なのだと思っています。この週末、ぜひつくってみてください。