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元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

地球温暖化は、環境問題じゃない!
経済問題として「ビジネスで解決する」時代

見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]
【第27回】 2010年10月12日
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 2007年に米国を追い越し、世界一の二酸化炭素(CO2)排出国になった中国が、2008年も第2位の米国との差を広げて、世界一になりました。米国がリーマン・ショックなどの影響で前年の57.6億トンから56億トンと2.9%排出を減らしたのに対し、中国は前年の60.8億トンから65.5億トン(7.8%増)にまで排出量を増加させ、2007年に自らが記録した(一国の)CO2排出量の過去最高値を更新したのです。

 いまや中国のCO2排出量は、世界全体(293.8億トン)の22.2%を占め、19.0%を占める第2位の米国と合わせると、この2ヵ国だけで実に世界のCO2排出量の41.2%を占めています。

 一方、2008年の日本のCO2排出量は、2007年の12.4億トンから11.5億トンへと7.3%減少しましたが、これは米国同様に景気後退の影響によるものであり、素直に喜べるものではありません。ちなみに日本のこの数字は、世界全体のCO2排出量の3.9%に過ぎないことは、既に第17回でも述べた通りです。

日本が必死に削減しても
世界の1%にも満たないという現実

 先日、温室効果ガスの排出量を「2020年に1990年比25%削減する」との中期目標を明記した『地球温暖化対策基本法案』が、今年6月に廃案となった内容のまま閣議決定され、今臨時国会で議論されることになりました。それに対し、経済界からは早くも反対の声が上がっています。

 「2020年に1990年比25%削減する」といっても具体的なイメージがわきませんが、削減実数(量)を数字で示すとイメージしやすくなると思います。1990年の日本のCO2排出量は12.6億トンでした。25%削減ということは、9.4億トンまで排出を削減するということになります。2008年のCO2排出量が11.5億トンですから、2008年対比では2.1億トンの削減が必要となるのです。

 しかし、2.1億トンという削減目標は、2008年の世界全体の排出量293.8億トンの1%にも満たない数値です。しかも、中国がわずか1年で増やしたCO2排出量が4.7億トンですから、その半年分にも届きません。中国は1990年以降、CO2排出量を43.1億トンも増やしています。2008年の排出量換算で考えれば、実に日本の3.7倍です。

 もちろん、地球温暖化対策において、国内の枠組みを議論することは確かに重要なことですが、国際的な枠組みなくしてこの問題はもはや語ることができず、国内だけの議論では残念ながら“焼け石に水”の状況なのです。

 前回の第26回で『環境問題を「地球温暖化」だけで語ったツケ』という話を書きました。ちょうどいま、名古屋で『生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)』が開催されていますが、生物多様性の議論に代表される通り、「環境問題」は人間だけの問題でなく、生態系を含めた議論が必要です。

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見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]

1967年生まれ、埼玉県出身。90年立教大学法学部を卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。05年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了(MBA)。同年10月に三井住友銀行を退職し、Mr.Childrenの桜井和寿等が設立したNPOバンク(ap bank)に理事として参画。09年2月に株式会社フィールド・デザイン・ネットワークスを設立し、代表取締役に就任。企業や金融機関に対する戦略・企画コンサルティングを行う。専門は、循環型(環境)ビジネス、ソーシャルビジネス、BOPビジネス及びファイナンス。立教大学AIIC「立教グラミン・クリエイティブラボ」副所長。多摩大学経営情報学部非常勤講師。
☆ご意見・お問合わせはこちら  ☆Twitterアカウント:ken_miyama


元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

ちまたにあふれる環境ニュースやキーワードの数々。近年のエコブームで「地球にやさしい」というところで思考停止してしまい、その本質を理解できていない人は意外と多い。当連載では、国やメディアに先導されたままの環境キーワードを取り上げ、「論理」と「感性」の両方を満たす、真の環境リテラシーについて考える。

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