「素直な良い娘だったのに最近は何を考えてるのか全然分かりません。部活動もやめて、学校帰りには毎日渋谷あたりでブラブラしているようですし、友だちは冬休みにプチ家出と称してお互いの家を泊まり歩き、娘自身も家出しようかななんて言うものですからつい怒鳴りつけたら、もう3週間も一言も口をきいてくれません。

 母親はすっかり諦めている様子で、大学生の長男ばかり溺愛するものですから、娘はますます拗ねてしまっています。娘には真剣に勉強させ将来を考えさせたいのですが、どうすればいいのでしょう」

部下は掌握できても、
娘は理解できない!?

 40代後半の大企業部長の肩書きは、彼が企業社会では優秀な人間であることを示している。しかし、私の前に座っている姿には、エリート企業人の面影は全くない。部下は掌握できても、自分の娘のことはさっぱり理解できないし、いたずらに心配ばかりつのる。

 彼の娘は中堅上位校、つまり中の上にランクされる私立中高一貫女子校の高校1年生。いわゆるお嬢様学校である。母親が期待をかけている長男は一流国立大学に現役合格。そんな子どもを持つ親は人生の勝ち組であったはずなのだが。

 「中学2年生くらいまでは元気に学校生活を楽しんでいたようなのですが、中3あたりから急激に覇気のない生活を送るようになりました。勉強もしなくなり、高1になって進路指導も始まりましたが、将来の夢や希望も持っていないようで、担任の先生もどう進路指導すればよいか困っています。このままいけばフリーターですよ。将来が心配だから勉強せよと言うと、娘は鼻で笑います。どうにかなりませんか?」

 彼の悩みは巨大だ。それは、現在この国を覆っているひとつの空気であるから、個人レベルでどうにかするにはなかなかやっかいな問題でもある。

  文部科学省は認めたくないようだが、どのような社会環境にあっても自ら望む道を見いだして将来の夢を抱き、自発的に前向きな意思を持ち突き進むことができる、いわゆる「生きる力」を持つ子どもは、ほんのひと握りなのである。

「子どもの将来」への投資
に熱心な中国と韓国

 多くの子どもたち、特に中高生の多くは、いつも時代の波に流されて生きる。大人や社会からのメッセージ通りに生きると言い換えてもよい。それは万国共通だ。