
名優のロビン・ウィリアムズ主演の不朽の名作映画『いまを生きる』。イギリスのパブリック・スクールで教鞭を取っていた主人公がアメリカの男子校に赴任する青春映画だ。彼は優れた古典を通じて生徒たちに勇気、理念、責任感などを教えるが、現実のパブリック・スクールでも古典の授業に重点が置かれているという。本稿は、秦由美子『映画で読み解く イギリスの名門校(パブリック・スクール) エリートを育てる思想・教育・マナー』(光文社新書)の一部を抜粋・編集したものです。
名作『いまを生きる』が
体現する「理想の教師像」
取り上げるのはアメリカの『いまを生きる』という、心を揺り動かされ、涙する映画です。1989年に公開され、日本では1990年に初上映されました。
主人公は、とある有名パブリック・スクールに赴任してきた教師のジョン・キーティング。この教師の在りようは、時に“理想の教師像”とも言われ、私の周りにも「キーティングを目指したい」という教員がいます。キーティングを演じたのは、今は亡き名優のロビン・ウィリアムズです。
彼は『ミセス・ダウト』でゴールデングローブ賞主演男優賞、『グッド・ウィル・ハンティング』でアカデミー賞助演男優賞をとり、『いまを生きる』をはじめ、たくさんの映画で主演を演じてきました。
では本作品のあらすじはというと、舞台は1959年、アメリカ・バーモント州にあるウェルトン・アカデミーという架空の男子全寮制学校です。この学校へ赴任してきたOBの英語教師キーティングと生徒たちの心の交流が描かれています。キーティングは他のどの教師とも違う異質な先生です。
一方、生徒は思うように生きることができない日々にもどかしさを感じている様子。そんな状況の中で、生徒たちが自分の人生をつかみ取っていく姿が、本作品では鮮やかに映し出されており、純粋な若者の感性や、熱い思いを私たちに伝えてくれる映画となっています。
ここで疑問に思った人もいるのではないでしょうか。なぜ、イギリスのパブリック・スクールの話をしているのに、アメリカの学校を舞台にした映画を取り上げるのか、と。その理由の1つは、キーティングがイギリスのパブリック・スクールで教師として働いた経験から、その優れた教育理念をウェルトン・アカデミーで再現しようとしていたからです。そして、もう1つの大事な理由は、この映画ではパブリック・スクールの教育内容やそれぞれの教師の教育に対する姿勢が、具体的に描かれているからなのです。