レシピ多すぎ、コスパ悪すぎ、献立ムズすぎ、皿洗い嫌すぎ……! 初心者だろうと、日々料理を作る人だろうと、平等に立ちはだかる自炊の壁。時間も余裕もないのに、どうすれば自炊を続けられるのか?「料理を勝手に難しくしているのは自分です」と語るのは、料理を体得したミニマリスト・佐々木典士氏と、自炊料理家の山口祐加氏。新刊『自炊の壁』では、初心者がレシピなしで料理できるようになるステップ100を完全網羅している。「気持ちが楽になった」「自分のための本だ!!」と話題が広がる本書から、内容の一部を紹介する。

料理研究家は、
「火通りを見誤らない」
山口祐加(以下、山口) 「料理のタイムライン」という考え方も意識すると、レシピから離れやすくなると思います。
たとえば、「小松菜と油揚げの味噌汁」を作るとします。水から沸かし始めたときが、タイムラインのゼロ地点。最後の100が食材に火が通り、食べるのに丁度よい温度になって、味付けも終えたとき。
油揚げは、火がしっかり入っても、あまり入ってなくてもそれほど大きく変わらないから、タイムラインのどこで投入してもいい。でも小松菜は、最初から入れちゃうと出来上がる頃にはグズグズになっちゃう。それが好きな人はそれでいいけど、歯ごたえを残したければタイムラインの終盤90ぐらいで入れる。
佐々木典士(以下、佐々木) 食材によって、どの程度火が通ってほしいかを考えて、タイムラインのどこで食材を投入するかを自分で決めるということですね。
食材のベストな状態を追求する
山口 豚汁だと、タイムラインの最後ににんじんやごぼうを入れても火は通らないから、最初のほうで入れることを意識したり。豚汁の具が薄切りの豚肉とねぎだけだったら、両方とも最後でも構わないし、ねぎは食べる直前でシャキシャキ感を残すのもいい。
タイムラインのどこで何を投入するかによって、食感も変わるし味も変わるから、それを意識して料理すると全然結果が違うんですよね。レシピでは、食材をどんな大きさで切るかも指示されているんですけど、食材にどのぐらい火を通すのかが根幹をなしていて、レシピの大部分を占めるので。
佐々木 切る大きさは、口に入るサイズで最悪いいし(笑)。
山口 調味料もやはりタイミングです。たとえば肉を炒めるとき、最初に味を付けておくと肉によく馴染んで臭み消しにもなります。最後に味付けをする場合は、肉の風味が残せるのでお肉の香りが好きな人はそちらを選ぶといいとか。
佐々木 タイムラインを考えるうえで、どんな食感でその食材を食べたいのか、まず仕上がりをイメージしておくといいのかもしれませんね。
(本稿は、書籍『自炊の壁』を一部抜粋・編集したものです。本書では、料理のハードルを乗り越える100の解決策を紹介しています)
作家/編集者
1979年生まれ。香川県出身。雑誌「BOMB!」「STUDIO VOICE」、写真集や書籍の編集者を経てフリーに。2014年クリエイティブディレクターの沼畑直樹とともに「Minimal&Ism」を開設。初の著書『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は26か国語に翻訳され80万部以上のベストセラーに。『ぼくたちは習慣で、できている。』は12か国語へ翻訳、累計20万部突破。両書とも、増補文庫版がちくま文庫より発売。
山口祐加(やまぐち・ゆか)
自炊料理家
1992年生まれ。東京都出身。出版社、食のPR会社を経て独立。7歳の頃、共働きで多忙な母から「今晩の料理を作らないと、ご飯がない」と冗談で言われたのを真に受けてうどんを作ったことをきっかけに、自炊の喜びに目覚める。現在は料理初心者に向けた料理教室「自炊レッスン」や執筆業、音声配信などを行う。著書に『自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話』(晶文社)、『軽めし 今日はなんだか軽く食べたい気分』(ダイヤモンド社)など。