ドナルド・トランプPhoto:Andrew Harnik/gettyimages

4月7日の日経平均株価が急落し、過去3番目に大きい下落幅となった。トランプ米政権の「相互関税」に、中国をはじめ各国が対抗措置を発表・検討。“貿易戦争”で世界同時不況になるリスクが高まっている。当のトランプ氏は「株価の下落は貿易赤字の解消のために必要なプロセス」「何かを治すには『薬』が必要な時もある」と意に介さない。また、関税引き上げの対象国になぜかロシアは含まれていない。トランプ氏に付ける薬はないのだろうか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

トランプ相互関税で株価急落!
ついに“貿易戦争”が激化か

 トランプ政権の経済政策で、世界的に景況悪化すると身構える投資家は増えた。特に、自動車の輸入関税の引き上げに踏み込んだことは、世界経済の先行きに重大なマイナス要因となることが懸念される。「トランプ相互関税」により、米国をはじめ世界の主要な株式・為替の金融市場に大きな衝撃が走った。

 本来、株価下落は政権に対する投資家の信認が揺らいでいることを示すものだ。しかし、今のところトランプ氏は気にかけない姿勢を取っている。それどころか、関税率を引き上げれば相手が折れて、トランプ氏の公約を達成できると思っているようだ。

 今回は除外されたが、米国が銅や医薬品、半導体などの品目に関税を課す可能性も高い。ベッセント財務長官は、「ダーティー15」と呼ぶ国・地域を対象に関税をかけるとも示唆している。

 トランプ関税の対象となった国は、自国の産業を守るため報復関税や産業保護策を検討している。対して米国は、追加の関税や規制発動もいとわない構えだ。

 ついに“貿易戦争”が勃発し、激化が懸念される。それは、世界の実体経済と金融市場に甚大なマイナスのインパクトを与えることになる。

 世界経済を見渡すと、米国にとって代わる景気のけん引役になり得る国は見当たらない。トランプ氏の強引ともいえる政策運営は、世界の経済・金融・安全保障に甚大な被害を与えるだろう。それに歯止めをかける方法は、あるのだろうか。