コンビニエンスストアの深夜営業は本当に必要か――。コンビニの経営を揺るがしかねない論議が、にわかに広がっている。
事の発端は6月16日、埼玉県が地球温暖化対策の一環として、飲食店などを含む深夜営業全般に対し、自粛要請を行なう方針を出したことにある。
これに対して、コンビニ業界が過敏に反応。業界団体の日本フランチャイズチェーン協会は4日後の20日に記者会見を開いた。深夜営業をやめることによる二酸化炭素の削減効果は日本全体の0.009%にすぎないことや、24時間営業は社会的要請に対応した結果確立したビジネスモデルであること、女性の駆け込みなどのセーフティステーションとしての役割があることなどを挙げ、深夜営業の正当性を訴えた。
深夜営業の是非はこれまでにも論議の俎上に載せられることはあった。主な発信源はコンビニのオーナー。十分とはいえない深夜売り上げの割に、人材の確保や深夜割り増しの人件費に苦しみ、「できるなら深夜営業はしたくない」という声を上げていたのだ。
ただし、「24時間営業は消費者ニーズであり、それに応えないとコンビニの価値が大きく減退する」というチェーン本部の主張に押され、真剣な議論には至らなかった。
しかし、今回に限っては事態が簡単に収束に向かう様子はない。
洞爺湖サミットの関係もあって、温暖化対策を明確に打ち出す動きのある行政。早々方針を表明している埼玉県は、今後コンビニ側ともよく話し合っていきたいと述べており、今年度末に改定する地域推進計画には自粛要請をなんらかのかたちで盛り込む予定だという。
オーナーからも、昨年10月に大阪府寝屋川市で起きた強盗による店員刺殺事件が記憶に新しく、安全性確保に不安があるという声や、「タスポ(taspo)」の導入でコンビニが夜間タバコを買いに来る不良少年のたまり場になるという新たな問題の指摘が上がっている。
いろいろな要因が重なって、初めて議論が深まりそうである。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 新井美江子)