日本でも毎年のように酷暑が続く中、地球温暖化を身近に感じている人も多いだろう。国際社会も、脱炭素化目標を決め問題解決に向けて前進しているように見えるが、現在までの削減ペースを見る限り、「2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を正味ゼロにする」という目標の達成など不可能に近い。地球温暖化の核心部を、世界レベルの“知の巨人”バーツラフ・シュミルが解説する。本稿はバーツラフ・シュミル著、栗木さつき訳『Invention and Innovation』の一部を抜粋・編集したものです。
国際社会は「化石燃料ゼロ」目標を
達成する気なんてさらさらない
地球温暖化は、改善される前に悪化するのが確実だ。たとえ、温室効果ガスの排出を即座に(しかも理論的に一部の隙もなく)停止したとしても、対流圏の平均気温をすぐに下げ、安定させることはできない。
世界規模の会議(および国家戦略)で、末尾が0か5の数字の年に脱炭素化の目標(2030年までに世界の炭素排出量を45%削減する、2035年までにアメリカの発電所からの二酸化炭素排出をゼロにする、2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を正味ゼロにするなど)を設定する傾向があるのは、あきらかに恣意があるからで、こうした目標を達成するには技術的にも経済的にも世界規模で大改革を敢行しなければならない。
20年で4%削ったものを
30年で83%削れるわけがない
こうした目標がいかに希望的観測に基づいたものであるかを、いくつか例を挙げて説明しよう。