インドの大手財閥であるタタグループ傘下のタタ自動車が、今夏、東京証券取引所に上場する計画という。最近、タタ自動車は、英国の老舗自動車メーカであるジャガーやランドローバーの買収を決めるなど、世界的なM&A戦略を打ち出している。同社は、東証上場と同時に大型の資金調達を行うとみられ、M&A戦略に必要となる資金需要を満たす狙いもあるようだ。

 また、今回の上場には、日本預託証券=JDR(ジャパン・デポジタリー・レシート)と呼ばれる新しい仕組みが使われる。それをきっかけに、今後、有力企業が東京の株式市場にやってくると、国内の投資家は、東京にいながら、円建ての株価で、それらの企業の株式を売買することができる。それは大きなメリットになる。

世界に乗り遅れた
日本の株式市場

 東京証券取引所に、外国株市場が開設されたのは1973年12月だ。既に、30年以上の歴史がある。80年代後半、バブル華やかなりし頃、海外の有力企業は、当時の東京市場の重要性と、潜在的な資金調達の機会を勘案して東京証券取引所への上場に興味を示した。その結果、1991年のピーク時には、127社の海外企業が上場するに至った。

 しかし、バブル崩壊後、わが国経済の低迷が長期化したこともあり、株価の下落傾向に歯止めが掛からず、取引高も低調な状態が続いた。そうした状況を反映して、海外の有力企業は、東京での上場を維持する意義を失うようになった。

 特に、日本語での情報開示に大きな時間と、コストが掛かることがネックになったと見られる。確かに、自国語で作成した決算書類等を、微妙なニュアンスを含んだ日本語に翻訳するためには専門の人材が必要であり、多くのコストを要することは間違いない。その結果、海外企業の上場件数は、徐々に減少する傾向を辿り、ここ数年は、ほぼ、20社から30社程度の水準が続いていた。

 こうした状況から、現在、わが国の株式市場は、ロンドンやニューヨークなどの主要マーケットから後塵を拝しているだけではなく、香港、シンガポールなどの振興市場からも遅れを取ることになってしまった。