
地銀再編の動きが加速する中、同一県内での合併として一足早く注目されたのが、5カ月前の福井銀行の決断だ。2024年11月、福邦銀行との合併に際し、行名を「福井銀行」に一本化すると発表。26年5月には「福邦銀行」の名が姿を消す。なぜその決断が可能だったのか。福邦銀行側の反発はなかったのか。長谷川英一頭取に、合併や行名一本化の合理性、福邦銀行を説得した経緯について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
地銀再編が全国で加速
各行が模索する統合の手段
――地方銀行の中でも、地域に深く根差す地銀と、県外や広域展開を志向する地銀で、姿勢の違いが際立ってきています。
10年、20年という中長期的な視点で見れば、地域そのものの将来性をどう捉えるかという根本的な問いに向き合わなければなりません。
八十二銀行と長野銀行、青森銀行とみちのく銀行の経営統合も、同一県内での強固な基盤を持つ地銀同士が再編に踏み切った例です。今後、こうした動きが全国で加速していくのではないかとみています。
私が頭取として果たすべき最大の使命は、福井銀行と福邦銀行の合併を通じて、福井県内で圧倒的な存在感と確かな経営基盤を築くこと。その上で、持続的な収益力を確保し、次の世代へしっかりとバトンを渡すことが、自分に課せられた役割です。
――地銀再編では、ふくおかフィナンシャルグループのように傘下に銀行を置いていくケースもあります。また、合併しても「八十二長野銀行」や「青森みちのく銀行」のように、両行の名称を残すことも多いです。そうした中、あえて合併を選び、行名を「福井銀行」に一本化された背景にはどのような考えや経緯があったのですか。
「コスト面では合併の方が圧倒的に効率的だ」と語る長谷川頭取。次ページでは、合併のメリット、福邦銀行側の反応、行名一本化の背景、そして上場の意義について聞いた。プライム市場への上場維持については「必要はあまり感じていない」と率直な思いも明かした。