6月1日、77年間に亘って「世界最大の自動車メーカー」として君臨してきた米GM(ゼネラル・モーターズ)が、予測通り米国連邦破産法11条を申請し、ついに破綻した。
すでに4月末、米国BIG3(ビッグ・スリー)の一角だったクライスラーが破綻して“予行演習”を済ませていたことに加え、米国政府が時間をかけて破綻の根回しを行なっていたことで、懸念された株式市場などへの悪影響はほとんど見られなかった。
むしろ投資家の間には、GM破綻という不確定な“イベントリスク”が消えたことによる安心感が広まり、その後の株式市場は安定した展開を示している。
確かに、オバマ政権の入念かつ細心の対応によって、GM破綻というイベントリスクは、実際にはかなり低減されていたと言える。しかし、それで実体経済に対する“下振れリスク”が全て払拭されたと考えるのは、適切ではない。
中長期的にみると、この破綻によって、いくつもの“リスク・ファクター”が顕在化しているからだ。そのリスク・ファクターとは、主に3つに分けて考えるとわかり易い。
まず1つ目は、今後の「GM再建プログラム」のなかで、従業員やディーラーの整理が進むことだ。それは、今後米国の家計を取り巻く雇用・所得環境の悪化につながる。
2つ目は、本当にGMを再生することができるか否かだ。破産法11条を申請して再生を目指しているGMだが、仮に再生できない場合には、今度は「破産法7条=企業清算」という最終手段が待ち受けている。
そして3つ目は、米国政府の信用力の問題だ。米国政府がGMの再生を積極的に支援するということは、事実上、政府がGMの信用を肩代わりすることに他ならない。
果たして、米国政府の信用力はその重みに耐えられるだろうか。今後、米国政府の信用力に疑念が生じるようだと、直近では不安が薄れつつある「100年に一度の危機」が、改めて一段と現実味を帯びてくることにもなりかねない。