
米国の「トランプ関税」の衝撃は世界中に広がり、株価が暴落している。何をしでかすかわからない「狂人理論」で世界を翻弄するトランプ大統領に、日本はどう対峙するべきなのか? キーワードは「トヨタのように舞い、孫正義のように刺せ」だ。(イトモス研究所所長 小倉健一)
トヨタが関税ショックに動じないワケ
2025年4月、世界に「トランプ関税」の衝撃が走った。米国のトランプ大統領は、輸入される自動車への25%追加関税を発効させ、さらに約60カ国に対し最大50%にも及ぶ「相互関税」を課す大統領令に署名した(日本は24%)。
市場は混乱し、株価は乱高下を繰り返す。JPモルガン・チェースは世界経済の年内リセッション確率を60%に引き上げ、著名な経済学者ジェレミー・シーゲル教授は「過去95年間で最大の政策ミス」(CNBC、4月4日)と断じた。
米中対立は報復関税の応酬で激化し、カナダも米国車に報復関税を発動、EUも対抗措置を準備しつつゼロ関税を提案するなど、各国の対応は様々だ。未曾有の事態に、日本はどう立ち向かうべきか。
日本を代表する企業、トヨタ自動車は関税ショックに対し、冷静さを保っている。その理由は、数十年にわたる地道な「準備」にある。
トヨタは早くから貿易摩擦のリスクを予見し、世界最大の市場である北米での現地生産体制を着実に構築してきた。S&P Global Mobilityの分析によれば、トヨタは米国での生産台数トップ5に入る主要メーカーであり、北米販売車両のかなりの部分を域内で生産している。