いじめが始まると、日ごろキレイゴトや高邁な理想を口にしていた社員らは、職場の権力者になびく。なかには、ここぞとばかりにいじめに加わり、自分の立場を守ろうとする者も現れる。
企業の職場では、ほぼ間違いなく、ほとんどの人がいじめを受けている人を救おうとはしない。
連載2回目は、このような「人権意識なき職場」で静かに闘い抜くタフな「負け組社員」を紹介する。この男性は壮絶ないじめを受けつつも、辞表を出すことなく徹底抗戦した。彼は、ストレスを抱えて心療内科の扉を叩くことになったが、その不満を晴らすためにテレクラ(テレフォンクラブ)通いを続けたという。
テレクラで見ず知らずの女性に話を聞いてもらうことでエネルギーを充電した彼は、資格試験の学校に通い、今では独立まで考えている。あなたにも、彼のような不屈の精神があるだろうか?
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■今回の主人公――這い上がった「負け組社員」
戸倉 修一郎(33歳)
ある不動産販売会社(従業員数300人)の第三営業部(20人)勤務。都内西部のマンション販売を担当する。中途採用試験を経て入社した1年半ほど前から、上司からいじめを受けるようになる。いじめは次第にエスカレートしていったが、闘志を内に秘めているだけに、ギブアップはしない。いまや、自分をいじめる周囲に対して反撃体制を整えつつある。
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(※プライバシー保護の観点から、この記事は取材した情報を一部デフォルメしています)
「俺の話を聞いてほしい……」
生きていく唯一のエネルギーはテレクラ?
井の頭公園(東京都武蔵野市)に面した通り沿いのビルの2階――。
「あなたの声、さびしそう……」
受話器の向こうから、女性の声が聞こえる。本人いわく、「33歳、フリーター」だという。身動きすら不自由するほど小さな部屋に、黒色の大きなソファがある。
戸倉修一郎は、そこに足を組みながら、腰掛ける。