松本人志氏、急転直下の訴訟取り下げ
世間に出回る憶測は本当か?
松本人志氏の訴訟取り下げが話題になっています。
私は週刊文春の元編集長ですが、現在の編集部とは一切連絡を絶っています。ですから文春側の人間としてではなく、週刊誌の名誉棄損裁判を多く経験した者として、一連の報道について「間違っている点」をダイヤモンド・オンラインで4回にわたって指摘してきました(記事末を参照)。
それらの記事で私が松本氏に対して忠告していたことは、結局、すべて当たっていました。
(1) この裁判は厳しい。不同意性交の「不同意」の部分について、あまりにも松本氏の理解が乏しいまま、全面戦争に突入している。
(2) 報道では裁判は長く続くと言われているが、今の裁判は裁判官が和解交渉によって短期間で終わらせる傾向が強いので、証人尋問などが終わらないうちに和解提案が行われ、早期に結論を出さねばならなくなる。
(3) 裁判の準備書面で「松本は女性の同意を得ずに、性行為を強制したことは一度もない。性行為の強制を訴えるのなら、まずは被害者とされる女性を特定しないと、その女性が存在するかわからない」(日刊ゲンダイデジタル)と主張し、報道当初は合コンそのものを否定した。しかし、その後飲み会があったことは認め、今回は性交渉もあったことを認めたことになる。現在の不同意性交の法的定義では、立場が上の権力を持つ側が同意があったと主張しても、権力のない側が不同意だったと証言すれば、不同意とみなされる潮流となっているので、これは罪を認めたに等しい。
(4) かつて「鉄拳制裁星野」などという時代錯誤のファンコールが名古屋球場を埋め尽くしていたのと松本騒動の本質は変わらず、「嫌よ嫌よも好きのうち」といった男性中心の論理をいまだに信じている人が世の中に多いだけ。これは、すでに現在の常識から外れている。裁判などせずに、「時代の変化に気付かず、女性を傷つけていたことを知った」と認め、被害者に詫びて終わらせるのが一番。ビートたけし氏の忠告に松本氏も従うべき。
この間、ほとんどのメディアは被害者女性の取材もせず、「文春vs松本」裁判の見通しばかりをコメンテーターが議論するという状況で、松本人志氏とその背後にいる吉本興業寄りの報道が多数を占めていました。
私は、各局が起用している弁護士のコメンテーターの多くは、賠償金が少ない名誉棄損裁判の経験がなく、お門違いのコメントをしていると指摘しました。実際、その後いくつかのテレビ局が連絡してきて、「番組で使うコメンテーターとしてどういう弁護士がいいか」と相談され、私が推薦した弁護士に交替したケースもありました。