インターネットの誕生により、情報の流通構造は激変した。マスメディアからしか入手できなった情報が、パソコンから入手できるようになり、手軽に誰もがホームページなどで情報を発信できるようになった。
そうした背景をもとに企業の消費者に対するコミュニケーションも2000年以後大きく様相を変えてきた。マスメディアでの広告だけではモノが売れなくなり、従来のマーケティング手法では対応できなくなった。本連載では、インターネット環境の変化に伴い変化した企業のマーケティング戦略を広告、SEO、PRというそれぞれの切り口から探る。
第1回目は、Webを使った手法の中でも、一際注目を集めている、インターネットを軸としたPR活動「WebPR」を取り扱う。
WebPRとは、メールマガジンやバナー広告のように企業から消費者に向けて直接的に情報を提供するのではなく、企業と消費者のあいだに介在する第三者、たとえばニュースサイトやブログなどのメディアを通じて、戦略的に情報を発信することである。
筆者はPR会社・ビルコム株式会社代表として、数多くのWebPRを手がけてきた。また7月にはWebPRの実践的なノウハウをまとめた書籍「WebPRのしかけ方」(インプレスジャパン刊)も上梓した。昨今、WebPRの関心が高まっている背景から、今回はWebPRの実践フレームについて解説する。
なぜ、いまWebPRなのか
2000年に国内普及率50%を超えたPCと、2001年に普及率が50%を超えたインターネットによって、情報の流通構造は激変した。情報の流通量を調査・分析する「情報センサス報告書」(総務省調べ 2008年)によると、消費者が選択できる情報量は10年前と比較して、約532倍にまで膨れ上がり、一方で、実際に消費された情報量は10年前と比較して、65倍となってる。つまり、増え続ける情報量に対して、人間の情報処理能力が追いついていないと言える。
このように、たった10年で500倍以上に情報量が拡大した要因は、インターネットを介した情報流通が普及したためである。
このインターネットの普及が消費者の生活に大きな変化を与えた。これまでは、商品についての情報を集める際に、テレビや雑誌といったマスメディアを通じてしか、情報を得ることができなかった。しかし今はニュースサイト、企業サイト、掲示板、ブログ、SNS、Twitterなど様々な手法で商品やサービスの情報を収集し、消費者から情報を発信することができる。
消費者自身が情報の発信者となった今は、いくら企業が隠そうとも、商品の欠点は消費者同士のコミュニケーションにより、明らかにされてしまう。もちろん、ネガティブな側面だけでなく、メーカーである企業が気づいていないような商品の魅力や、消費者の個人的嗜好に合った特長を見い出すこともある。