資産目標やリスクの許容度などを決めれば、機械が自動的に投資先を助言する「ロボアドバイザー」。テクノロジーの進化に伴い、このサービスが世界的に広がりを見せている。米国における運用残高は2020年に2.2兆ドル(約230兆円)に達すると予想されるほどだ(2015年ATカーニー調査)。

その波は日本にも及び、Fintechと呼ばれるベンチャーや大手金融機関が次々とサービスを始めている。2016年7月に一般サービスの提供を始めたウェルスナビもその一つだ。2015年に設立したばかりにもかかわらず、3大メガバンクなどから約6億円の出資を受けた注目ベンチャーである。財務省、マッキンゼーを経て起業した異色の経歴を持つ、柴山和久CEO(38歳)に話を聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部・小島健志)

──7月から一般向けのサービスを始めましたね。まず、どういうサービスなのか教えてください。

しばやま・かずひさ
1977年群馬県生まれ。東京大学法学部卒業後、2000年に旧大蔵省(現財務省)に入省。ハーバード大学で金融取引法を学び、ニューヨーク州弁護士登録。英国財務省に出向中は、EU代表として国際交渉にも参画した。2009年に財務省を退職後、フランスのビジネススクールINSEADで金融工学を学び、2010年にマッキンゼーに入社。ニューヨークに拠点を置く10兆円規模の機関投資家向けのリスク管理・資産運用プロジェクトに携わる。2015年4月にウェルスナビを設立。3メガバンクなどから約6億円の資金調達を行い、2016年1月招待制サービスをスタートし、7月に一般向けサービスを開始する。 Photo by Toshiaki Usami

 我々のサービスとは、事前にリスク許容度や投資目標などを決めていただければ、ウェブアプリを通じて「一人一人の顧客にとって最適な資産運用サービスが自動的に受けられる」というものです。

 と言っても分かりにくいと思いますので、まず、これまで一般の個人投資家が置かれていた状況をお伝えします。

 そもそも、投資を始めようと思っても、金融機関が勧めるのは、高利回りをうたったリスク性の非常に大きな金融商品やコスト負担の重い商品であることが少なくありません。

 私は、前職の米マッキンゼー・アンド・カンパニーで、米国の機関投資家に対してアドバイスをする仕事をしていました。10兆円もの運用資産を持つ顧客を相手に、投資におけるリスク管理規定を定めていたのです。

 リスク管理規定をシステムに組み込むことで、例えば投資不適格債を束ねた「ハイ・イールド債」といった、高利回りながらリスク性の高い金融商品が一定以上、資産に組み入れられないようにしていました。

 そんなとき、ふと日本の個人投資家を見ると、ハイ・イールド債がなぜか人気を集めていました。10兆円の資産を持つプロの投資家ですら慎重に買うものを、日本の金融機関が個人に勧めている状況を目の当たりにしたのです。