NISAにロボアドバイザー
運用ビジネスの活況はいいのだが

資産運用ビジネスが活況を呈することはいいことだが、それが顧客にとっても幸せをもたらすとは限らない

 NISAの口座数が1000万口座を超えた。もちろん、全ての口座が「稼働」しているわけではないだろうが、資産運用に対する関心が高まっている。

 また、最近は「フィンテック」という言葉を頻繁に聞くようになり、その1カテゴリとして、顧客に投資をアドバイスする「ロボアドバイザー」と呼ばれているシステムとプログラムが注目されている。たとえば、投資啓蒙書のベストセラーである『ウォール街のランダムウォーカー』(井手正介訳、日本経済新聞社。このほど第11版の翻訳が出版された)の著者バートン・マルキール氏は、ロボアドバイザーの大手業者である米ウェルスフロント社のCIO(最高投資責任者)に就任した。日本にも、ロボアドバイザーを使ったサービスを提供する業者が登場している。

 このように資産運用ビジネスが活況を呈することは、長年「貯蓄から、投資へ」を標榜する政府や金融業界にとってもいいことだし、今後、公的年金の給付水準低下が予定される中で、個人にとっても建前上はいいことだろう。

 しかし、ビジネスが活況を呈することが、そのビジネスの顧客にとっても幸せをもたらすとは限らない。今回は、「お金の運用」を考える上で、ぜひ頭に入れておきたい、お金の重要な性質を2つご紹介し、その意味を確認しておきたい。

 実は、運用ビジネスが提供する商品やサービスのかなりの部分が、この2つの性質に関する、無視ないし誤解に基づいて提供されている。そして、そこで損をしているのは顧客の側なのだ。

お金の重要な2つの性質は
「スケールの自由」と「使途の自由」

 お金の重要な2つの性質とは、「スケールの自由」と「使途の自由」だ。

 スケールの自由とは、同じものに投資した場合に、金額が大きくても小さくても、同じリターンを得ることができる事情を説明したいと思って考えた表現だ。

 たとえば、仮にトヨタ自動車の株式を同じ時期に保有するとすれば、GPIFのような巨大投資家や、ジョージ・ソロス氏のようなプロの投資家が保有しても、小遣いをやりくりして一単元投資したサラリーマン投資家が保有しても、同期間の投資元本に対するリターンは同じだ。

 厳密にいうと、同じTOPIX(東証株価指数)のインデックスファンドに投資する場合でも、数千億円単位の場合と、数十万円単位の場合では、運用管理手数料が少し異なるが、その差は運用の意思決定を大きく変えるほどのものではない。