財布を持たないぜいたく散歩
私は、一瞬を大切にするために「1円もかからないシンプルなこと」を楽しむようにしています。
人とは違った特別な体験や、大きくて豪華で新しいモノを手に入れることなど必要ありません。そうではなく、お金のかからないもの、すでに持っているもの、すぐそこにあるものに価値と意味を見出しましょう。
生活の中のシンプルで小さなことを楽しむ。そこからワクワク感は生まれます。
たとえば、仕事で新しい人とつながること、なにげない雑談がおもしろい会話に広がったりすること。マグカップの中からただよう濃い紅茶の香り、仕事に行く途中の車の中で感じる一日の光の変化、四季の変化。
それから、夕方のウォーキングで見る木々、新鮮な空気の香り、海の音。娘が前回よりもうまくテニスのボールを打てたこと、運転中に心に染み入るようなクラシックの音楽が流れてくること、図書館でたくさんのおもしろそうな本に出合うこと……。
私は、建築が大好きです。豪華な家に住んでみたいということではありません。いろいろな建築を見るのが好きなのです。
通りを歩いていると、見とれてしまうような素敵な建築を見つけます。光の反射のしかたで、建物のかたちやディテールが見えたりします。いつもと違う道を歩いたとき、いままで見たこともなかった建物に出合い、びっくりすることもあります。
「誰が住んでいるのだろう?」「どんなお仕事かしら?」「家の中はどんなだろうか?」と考える時間が大好きです。建築を見ながらぶらぶらすることは、私にとって、お金のかからない、財布もいらないぜいたくな散歩なのです。
人生の速度を緩めてまわりを見渡してみると、小さくてシンプルかもしれないけれど、たくさんのおもしろいものが見つかるはずです。