「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。
「老いた親と話すとき」に使ってはいけない1つの言葉
「とりあえず『ものは試し』で、ヘルパーさんに1回頼んでみようよ」。決して悪くない伝え方ですが、高齢者に「ものは試し」という誘い文句はあまり効果がありません。
なぜなら、日々、目が見えにくくなる、歩けなくなるなどの「喪失体験」を繰り返している親には、「できないことが増えていることに気がつくリスク」のほうが高いと思えてしまうからです。「新しいチャレンジ=失敗のリスクが高い行動」なのです。
ましてや、日常生活のお世話を他人にしてもらうわけですから、それはもう「高い壁」に感じるでしょう。
こんなときには「漠然とした不安」を取り払うための質問をしてみてください。そもそも、介護されたことがない親は「介護サービスとはなにか」わかっていません。漠然と「年寄りっぽくてイヤ」と拒否していることがほとんどです。
ですから、まずは「親が抱いている不安の正体」をあぶり出すのがポイントです。たとえば「大丈夫! 私がついているから。介護サービスのなにが不安なの? なるほど。ほかに気になることはない?」と聞いてください。この質問で「親が感じる不安の正体」がわかります。
そのうえで、不安に対する「対応策」を示せば大丈夫です。不安を一つひとつ潰していけば、やがて前向きな返事がもらえるはずです。