トランプ第2期政権で
米国は「偉大な国」になるのか?
トランプ前大統領が予想以上の差をつけてハリス副大統領に勝利し、大統領に返り咲いた。ウクライナ情勢や対中関係、在日米軍の駐留経費問題、通商交渉等で、日本も第2期トランプ政権のアメリカ・ファーストの政策に振り回されることになりそうだ。
選挙中の世論調査でトランプ氏が掲げる経済政策がハリス氏のそれよりも優れていると答えた有権者が多く、その傾向が選挙結果にはっきりと表れたとされている。
だが私にはトランプ氏の口にする関税引き上げや減税など政策や公約には矛盾があり、「アメリカを再び偉大」にし黄金時代にする秘策であるとは思えなかった。
例えば、雇用を守るという関税引き上げなどの保護貿易はインフレを誘発し労働者らの生活をより厳しくするし、減税による投資促進も格差をむしろ拡大する事態を招きかねないものだ。
それにもかかわらずウォール・ストリート・ジャーナル紙やイーロン・マスク氏のような“経済のプロ”までがトランプ氏の何に期待しているのか。
見えてくるのは、危険なポピュリズム的な政策運営だ。
関税引き上げ、保護主義は一時的効果
雇用守れずインフレ再燃で事態悪化も
選挙後の世論調査やメディアの分析などで、ラストベルトといわれる激戦州で、非白人を含む労働者層からトランプ氏が支持された理由として挙げられたのは、(1)ウクライナ戦争等の影響でインフレが進行し、人々の生活が苦しくなっている、(2)景気が回復しているとされるが、その恩恵は一部の富裕層に限られ、製造業自体の不振のため雇用は依然として不安定――という二点だ。
トランプ氏は、雇用問題に対する“特効薬”として、アメリカ産のものと競合する輸入品に対して、高い関税を導入すると言っている。また、日本製鉄によるUSスチールの買収を阻止することや、不法移民の送還などの移民規制強化を選挙公約などで掲げている。景気全般を回復させるための減税や、FRBに圧力をかけて金融を緩和することも公言している。