大和証券グループ本社は2024年度の上期(4~9月)決算で、純営業収益と経常利益が連結会計を導入した2000年度以降の上期で最高額に達した。その要因は近年進めてきた「改革」の成果だと、吉田光太郎CFO(最高財務責任者)は明かす。一方で最大手の競合、野村ホールディングスとどう差別化するのか。長期連載『経営の中枢 CFOに聞く!』の本稿で、吉田CFOに聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
市況頼みの経営では市場に支持されない
「歴代社長の改革の成果が表れている」
――2024年度上期(4~9月)は連結純営業収益3102億円、経常利益1106億円と連結会計を導入した2000年度以降で上期として最高となりましたが、絶好調の要因は何ですか。
まだ絶好調という状況ではなく、冷静に受け止めています。
かつて証券会社の業績は、相場で変動する市況頼みのところがありましたが、それでは資本市場や株主に支持されません。そういう長年の課題があり、やはり経営基盤は市況に左右されずに強靱であるべきだということで歴代の社長が改革してきた成果が今、着実に表れているのだと思います。
(国内個人を顧客とする)ウェルスマネジメント部門、投資信託などを扱う証券アセットマネジメント、不動産投資信託(REIT)などを運用する不動産アセットマネジメントは、その預かり資産が増えれば増えるほど収益が増えるので市況に左右されにくい。
この「ベース利益」をどれだけ伸ばせたかが重要な経営指標です。経常利益1106億円のうち、一過性ではないベース利益は6~7割程度あり、経営の安定度は高まっているといえます。
ベース利益は何を表しているかというと、お客さまや投資家からの信頼の証しです。ウェルスマネジメント部門は個人のお客さまが中心なので、信頼をいただければ資産を預けていただける。アセットマネジメント部門は投資家から「この商品いいよね」と思っていただければ、売りより買いの方が多くなる。結果的に残高が増えていく。
お客さまの株を売買して委託手数料を得るブローカレッジビジネスだけでは、持続的に信頼を積み重ねていくことは難しい。お客さまの資産に関する悩みの解決や相続・贈与のお手伝いをしていくためには、長期的なリレーションを築くことが欠かせません。
市況が良ければもうかる、悪ければ赤字になるという状態では、証券会社の経営者は一体何をやっているんだという話になる。証券会社ではあるけれども、安定的な収益を積み上げなければならない。
「貯蓄から投資へ」という国策の下、新NISA(少額投資非課税制度)も今年始まるなど証券会社に追い風が吹いている。大和証券は、そうした追い風を背にファンドラップや地方銀行との連携などを展開する。また、個人向けだけでなく、法人向けビジネスにも追い風は吹く。それは何か。次ページで明らかにする。