日本の地下経済の規模は24兆円!
「ポルノ税」が税収アップのカギ!?
GDPは経済の実体を正確に映していない!?
唐突ですが、まずはみなさんに1つの疑問を投げかけたいと思います。GDP(国内総生産)はその国で生み出された付加価値の合計で、もっと平たく言えば、その国の経済規模とも表現できます。このGDPは正確にその国の経済の実体を捉えたモノサシだと言えるのでしょうか?
確かに、GDPはその国の様々な生産活動を網羅した統計データです。
しかし、実際には集計の対象から漏れているケースも少なくありません。たとえば、麻薬・覚醒剤の密売、違法賭博で稼いだアングラマネーや、ソープランドや援助交際による売春で発生した利益、脱税で徴収を免れた資金は未計上です。また、窃盗品の転売による収益も加味されていません。
さらに、主婦の家事労働や日曜大工、家庭菜園、ボランティア活動もお金の受け渡しはないものの、付加価値は生み出されています。にもかかわらず、集計には加えられていません。つまり、必ずしもGDPは経済全体の姿を正確に映し出す鏡ではないということです。
GDPの算出対象を「オモテの経済」とすれば、対象外の活動は「ウラの経済」と位置づけられます。そして、「ウラの経済」は主婦の家事労働のような金銭の授受がない活動と、非合法もしくは非合法まがいの活動に大別でき、後者は「地下経済」と呼ばれます。
どこからどこまでを「地下経済」とみなすかは専門家の間で意見が分かれますが、こうした地下の部分が除外されている分だけ、経済の実体が過小評価されていることは明らかです。日本の「地下経済」はGDPの約5%に及ぶと見られますが、グローバルに見渡すと、その規模が20%以上に達している国も存在しています。
そこで、たとえばイタリアでは08年に「ポルノ税」を導入して「地下経済」やそれに近い経済活動に税を課し、オモテとウラをうまく共存させるアプローチを試みています。また、ギリシャは「地下経済」の活動も推計したうえでGDPを算出しています。
こうした「地下経済」の存在は、経済政策の効き目を弱くしたり、税収減につながったりと、数えきれないほどのデメリットをもたらします。ただし、その一方で特に不況期には、雇用の受け皿になるというメリットもあります。
ちなみに、仮に「地下経済」で大きな割合を占める売春を合法化し、500円の「セックス税」を導入したら、どの程度の税収が見込めるでしょうか?
応用数学の「待ち行列理論」から推計した1日当たりのソープランドの客数は1店舗につき41.2人で、年間では1万5038人となります。
したがって、1軒当たり500円×1万5038人=751万9000円の課税に。警察庁のデータによれば08年のソープランドの店舗数は1249軒で、日本全体では751万9000円×1249軒=93億9123万1000円の税収が見込まれます。
●筆者Profile
BRICs経済研究所・門倉貴史さん
慶應義塾大学卒業後、銀行系シンクタンク入社、生保系シンクタンク主任エコノミストを経て、05年にBRICs経済研究所を設立。新興国経済および地下経済に関する著書も多数。中国やインドなどの海外はもちろん歓楽街の取材も積極的にこなす。