認知症でもパソコンスキルは健在
ストーカーと化す老人たち

「女性は恋すると美しくなる、男性の好みに変わっていくといいますが…。パソコンに残された写真を見る限り、11年間で不倫相手女性が綺麗になっていく様子が伝わってきました。ファッションや持ち物が変わったからでしょう。観光地同様、まず母に勧めてみて良ければ彼女にプレゼント。それを彼女が身に着けるという構図です。父もまたそうした出費のメモをパソコン内に入れていました。ここまで来るともう、笑うしかないです」

 だが笑えないこともあった。父親の認知症が進行し、家族だけの介護が限界を迎えたため、近隣の介護施設にデイサービスの申し込みを行った際のことだ。担当のケアマネージャーの名刺を見て驚いた。

「不倫相手女性と同じ“ユカ”という名前だったのです。父はそのケアマネさんを交際相手だと思い込み、母は父の不倫を思い出し…それで施設に事情を話して申し訳ないけれど担当を替えていただくことにしました。そのケアマネさんからすれば、とんだとばっちりですが、こればかりは仕方がありません」

 しかし悪夢はこれで終わらなかった。認知症を患ってるとはいえ、もともとITスキルに長けた父親だ。まだ十分、パソコンは扱える。かつての不倫相手と混同したケアマネージャーの、名刺上に記された名前から、SNSで彼女を割り出しコンタクトを取ったのだ。

「施設のほうから連絡を受けて、ただただ驚きました。ひとまずパソコンを取り上げることで対応しました。過去には“チャット”もしていたという父なので、それくらいはやりかねません。家族として管理不行き届きを恥じ入るばかりです」

 もっとも施設に謝罪に行った母親と息子に、ケアマネージャー本人や施設側スタッフは寛大だった。「時折、そうしたことがある」のだという。

 事実、こうしたITスキルに長けた高齢者のうち、認知症患者による「小さな事件」は、高齢者を介護する家族や福祉・介護関係者の間ではよく見聞きする話なのだそうだ。

 大阪府内にある老人福祉介護施設のスタッフ女性のひとりは、70代後半の利用者男性から、「ネットストーキング」の被害に遭った。その経験をスタッフ女性は次のように語る。

「実名で顔写真も掲載してSNSを行っていました。そのSNS上にアップした私や子どもの写真を利用者男性が自身のブログに無断掲載、『自分の妻と子ども』と書き込みました。施設内では私の過去の書き込み内容を話したり…。利用者本人のご家族に注意してもらったのですが一向に止む気配はありません。結局、私がSNSを閉じ、他のネット上の書き込みやアップした写真は、全て消去することで解決しました」

 なにも介護スタッフがSNSを閉じなくても、と読者の皆様は思うかもしれない。しかしスタッフがSNSにアップした写真のなかには、居住地を示すヒントとなる写真が含まれていることもある。

 ハイテク化時代の高齢者のなかには、その写真をもとにスタッフの居住地まで押しかけてくるケースもあるという。前出のスタッフ女性が語る。

「同僚女性スタッフのなかには、居住地の最寄り駅が映り込んだ写真をSNS上にアップ。それをスマホで見た利用者男性(高齢者)が、彼女に会いたいと思い、外出したまではいいのですが、そのまま自宅に戻れず、警察に保護されて事なきを得たこともありました。今、介護スタッフはSNSをすることにも気を遣います」