1992年7月に仙台市の地下鉄泉中央駅開業に合わせて駅前にオープンした総合スーパーの「イトーヨーカドー仙台泉店」。地元では今、その閉鎖が既成事実のように語られている。

SCの核店舗が抜けると 施設全体が廃墟と化す恐れも契約切れの2012年で閉鎖の観測が強まっている「イトーヨーカドー仙台泉店」(仙台市)

 大幅な売り上げの落ち込みに加えて、バブル期にできた建物は家賃も高水準で、利益を圧迫している。建物オーナーである住友商事に家賃引き下げを要望しているが、交渉は難航しているようだ。このため2012年の契約切れを機に撤退するとの見方が強まっている。

 「イトーヨーカ堂の店舗閉鎖の動きが台風の目だ」──。ある商業施設コンサルタントはそう語る。ヨーカ堂が核テナントとして入居している商業施設の家主や地元経済界が同社の撤退の動きを警戒しているというのだ。

 同社は10年10月、JR秋田駅前のショッピングセンター(SC)の核店舗だった「イトーヨーカドー秋田店」を閉鎖した。同店撤退後も食品スーパーを誘致するなどしてSCは営業を続けているが、地上7階建ての建物はテナントの空きスペースが目立つ。

 「大型の核店舗が抜けてしまうと、その後釜を探すのは難しい。核店舗がなければSCとして成り立たず、その他のテナントも徐々に歯抜けになってしまう」(前出の商業施設コンサルタント)。

 ピーク時の93年2月期には800億円を超えたヨーカ堂の営業利益は、10年2月期はわずか17億円にまで縮小。不採算店整理のために13年2月期までに30店舗を閉鎖する計画を打ち出したものの、11年2月期も営業損益は収支とんとんにまで落ち込みそうだ。このため、今のところ計画に上がっていない仙台泉店を含め、「閉鎖店舗がさらに増えるのでは」との観測が絶えないのである。

 「セブン-イレブンのおかげでグループの財務力は強いのだから、赤字店の減損処理を繰り返すより一気に閉鎖したほうがいい」(証券アナリスト)との見方も強い。確かにヨーカ堂の経営を考えれば不採算店整理は当然の判断ともいえるが、SCのオーナーたちにとっては頭の痛い問題だ。

 ヨーカ堂に限らず、専門店などの台頭で競争力を失った総合スーパーの閉鎖は増えている。商業統計調査によれば97年に全国に1888店舗あった総合スーパーは、直近調査の07年で1585店舗に減少、現在ではさらに1300店舗前後に減っていると見られる。一方で、全国に約3000あるSCのうち3分の1は総合スーパーが核店舗となっている。

 総合スーパーの撤退跡を居抜きで安く借りて出店するディスカウントストアもある。九州が地盤のトライアルカンパニーがその代表で、約130店舗のうち6~7割が中古物件。だが、「トライアルの家賃水準は総合スーパーの半分以下。家主としては採算割れを覚悟しなければならない」といわれる。

 「結局、総合スーパーの撤退跡を埋められず、廃業に追い込まれるSCが増えるだろう」と大手スーパーの元経営者は断言する。シャッター商店街ならぬシャッターSCが今後急増する懸念が高まっている。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 田原寛)