選挙前、数年の拡大期を経た米景気サイクルは2017年に鈍化すると想定していた。昨年12月にただ1回引き上げられた政策金利の観点からは、現在の米経済は上のグラフのA点に位置するとみられるが、内実はすでにB点に至っていた。

 完全雇用状態の一方、ドル高と外需低迷で米企業は収益悪化と輸出減に見舞われ、原油安によるシェール部門の痛手から設備投資もマイナスになった。しかしトランプ氏の公約の減税やインフラ投資が満額で実現されるなら、米GDP(国内総生産)成長率は17年後半~18年前半に3.5~4.0%に加速し得る。FRB(米連邦準備制度理事会)は今年12月と来年に2回以上の利上げを行い、長期金利は2.5%以上に上昇しよう。

 この金利前提から来年115円予想を算出した(下のグラフ)が、ひとたび明快な方向感を得た相場はこの中期予想水準近くまで一気に進んでいる(これも相場の常)。政策の実現度次第で一段の上振れもあり得る。

 米新政権の政策が部分的にしか実現されない事態や、政治的摩擦、来年の欧州主要国選挙にまつわるユーロの動揺、ドル高による新興国・資源国の再脆弱化、中国からの資本流出懸念再燃など、リスクオフの円反発要因はそこかしこにある。しかし今後数カ月は、米新政権の布陣と、どの程度の公約が早期実現され得るかをにらみ、ドル円の上値を試す余地と持続性を探る場面と認識している。

(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー 田中泰輔)