斉藤 あるケースでは北海道の刑務所から広島県の実施施設まで飛行機で移動することもあるようです。

高橋 そんなに長距離を!?当然、コストがかかりますね。

斉藤 はい、彼らの刑務所内での更生処遇には多くの社会的コスト、つまり税金が費やされています。だとすると効果が気になりますよね。平成27年の犯罪白書で同プログラムは有効だと報告されていますが、私たち専門家は首をひねる部分もあります。まずプログラム実施時期の問題があります。刑期のうちいつ受講するかは施設側の意向で決められるため、10年の刑期中、途中の5年目などで受講する場合があります。

高橋 出所するころには忘れちゃいそうですよね……。

斉藤 しかも誰もが受けられるわけではないんです。知的や精神の障害、身体疾患がある、あるいは言語能力が低いなどの人は分類で外されます。基本的には治療反応性が高い人が中心に選ばれるのですから、効果が上がるはずです。

高橋 性犯罪加害者、しかも再犯で逮捕された男性の裁判を傍聴したとき、被告人が「刑務所で性犯罪更生プログラムを申し込んだけど、受講できなかった」と話していたのを聞いたことがあります。

斉藤 常習性が認められていても、分類で外されたのでしょう。私もときどき、受刑者からそのような手紙を受け取ります。

高橋 でも、そういう人ほどハイリスクなのでは? 現に彼も、再犯して逮捕されていました。被害者にとって悲劇であることはいうまでもないですが、更生したいと願っていたのに、適切なプログラムを受けられなかった彼の境遇にも理不尽なものを感じます。

斉藤 おっしゃるとおりです。何らかの障害があったり、出所しても家族がいなかったり、生活基盤がなかったり……。社会とつながれずに感じた孤独が、再犯の大きな引き金となります。特に、満期出所の人が危ないですね。身元引受人がいないし、刑期が長いほど浦島太郎状態になるので、出所後に社会から孤立します。