こうした自由化による大競争時代で勝ち残りの鍵となるのが、ガスの価格競争力を高めるための戦略だ。自由化によってガス料金の規制は撤廃される。ガスの品質での差別化は難しいため、価格競争になるからだ。

 ガスの原料は液化天然ガス(LNG)で、東京ガスは年間約1400万トンを輸入している。このLNGをいかに安く調達するかが、ガス料金の競争力に直結する。

 だが、アジアで流通するLNGの輸入価格は原油価格に連動しており、その市況に左右されてしまう。14年8月に1バレル当たり100ドル台だった原油価格が急落して16年2月に20ドル台を付け、世界経済が大混乱したことは記憶に新しい。東京ガスもこの急変に、少なからず揺さぶられた。

 図(3)は都市ガス事業の売上高と利益率の推移だ。15年度に売上高が減少しているのは、資源価格の変動をガス料金に反映させる制度である原料費調整制度の影響だ。原油価格急落に連動してLNGの平均輸入価格が下がり、それがガス料金に反映されて売上高が減少した。

 LNGの調達コストも下がり、利益率は14.8%に達し、15年度の利益水準は過去最大となった。これは原油価格下落局面での典型的な現象だ。だが、裏を返せば、原油価格高騰時には、一気に利益率が悪化する危険がある。実際に原油価格が上昇局面だった11年度は、利益率は7.5%だった。

 16年12月、原油価格に大きな影響を与える石油輸出国機構(OPEC)が15年ぶりに原油減産合意に至り、「今後はじわじわと資源価格が上がるタイミングで厳しい方向にある」と比護財務部長は話す。

LNG調達コストの低減は電力事業の改善にも直結

 そこで東京ガスが取り組み始めたのが、LNGの調達先や調達契約を多様化することだ。例えば、同社はシェールガス革命でガス大増産を実現した米国からのLNG輸入プロジェクトを持つ。「コーブポイント」は17年、「キャメロン」は20年に輸入開始予定だ。北米のLNGは「ヘンリーハブ」といわれる、原油価格に連動していない指標で取引されている。従来の原油価格に連動している調達契約に加えて、ヘンリーハブによって取引価格が決まる契約を持てば、原油価格の急変の影響を限定させることができるのだ。

 また、16年11月には英国最大のガス会社であるセントリカ社と協定を結び、ガス調達コスト低減へ向けて動きだした。こうした取り組みが奏功すれば、図(3)のガス事業の利益率の変動幅を、上へスライドさせることにつながる。

 そして、LNG調達戦略は成長戦略の中核に据える電力事業にも影響する。保有する発電所はいずれもLNGを燃料とする火力発電所だからだ。競争激化によって売上高と利益率の両方が低下しているが(図(4))、16年度に掲げた顧客獲得件数の目標値である53万件を16年11月に達成するなど、着実に足場を固めている。

 4月、自由化によって家庭向けガスと電気の市場は大競争時代に突入する。そこへ資源価格上昇も重なるため、東京ガスにとってLNG調達戦略は、今後の浮沈を左右する生命線となっている。