過去10年間の財務体質改善に集中した経営を経て、伊藤忠商事は今、反転攻勢に出る。管理主義がはびこる社内では権限が分散され、意思決定スピードも落ちている。「営業が主軸の現場主義」への原点回帰はなるか。岡藤社長に聞く。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 脇田まや)

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 財務体質改善に努めたこの10年間を否定するつもりはない。ただ、10年は長かった。資源が高騰し始め、純利益が1000億円を超えた2005年頃には、積極投資を再開すべきだった。

 伊藤忠商事はもともとやんちゃで自由闊達な会社だったが、管理部門が力を持つようになって、営業部門が萎縮してしまった。私は、営業があくまで中軸で、管理はサポート役として必要に応じてブレーキをかける組織に変える。営業が自信を持って走り回ることのできる組織こそが、伊藤忠の原点であり、あるべき姿だと思っている。

 その変革のためには、管理も「営業マインド」を持って考え、行動してもらう必要がある。取引先を回る営業に同行させたり、若いときから海外に送り出したり、事業会社で経験を積ませたり、これからは営業と同じ土俵で鍛えていく。

 社内の入り組んだルールに縛られてはならない。われわれは商売をしているのだ。会社にとって儲かる話なのか、そうでないのか、シンプルな基準で自信を持って決断できる人材を育てていく。

 組織の中にあって自立し、個人として質の高い仕事をこなせる人が欲しい。儲けとリスクを冷静に把握し、比較したうえで、あらん限りの工夫と努力で儲けを極大化し、リスクを極小化して案件をまとめる。そこに自信を持って事業を推し進めることのできる人間を、ぜひ育てていきたい。