東日本大震災は東北沿岸地域の市町村から、住宅も工場も生産設備も漁船も根こそぎ奪い去った。だが、そうした資産は消えてしまったのに、無慈悲にも負債という名の借金は厳然として残っている。こうした事態はこれからどのような問題・課題を生むのか。
思い起こせば1995年1月の阪神・淡路大震災では、8月に地元の兵庫銀行が経営破たんした。それは戦後初めての銀行の破たんであった。こうした金融機関の破たん処理にあたったのが、当時、大蔵省銀行局長であった西村吉正元早稲田大学教授である。西村氏は今回の大震災における債務者と金融機関の状況は、阪神・淡路のときよりも一段と厳しい状況にあり、それを踏まえた準備が必要だと指摘する。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)
経済の地力・回復力に
阪神・淡路とは大きな差がある
――東日本大震災では、何十万という住宅や生産設備が大きな被害を受けました。住宅や設備が崩壊する一方、住宅ローンや借入金を抱えた被災者もたくさんいます。これからどういう問題が起こっていくのか。阪神・淡路の経験から言えることはありますか。
同じ大震災ということで、阪神・淡路の経験をと、だれもが思うのでしょうが、おそらく今回と根本的に違うのは――阪神・淡路も6000人以上もの人が亡くなる大災害ではあったが――神戸という経済的な蓄積が大きい場所で起こり、周囲には大阪などの被害の少ない大経済圏が存在していたということです。