ホンダが日立オートモティブシステムズとモーター事業で提携した。自前主義を貫いてきたホンダだが、ここ最近、企業との提携が相次いでいる。電動化といった新技術の台頭で、単独での開発はもはや不可能だからだ。開発効率を重視する中で、既存のサプライヤーとの関係性にも変化が生じている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本 輝)
「ホンダと日立が手を組むのも意外だが、さらに内容がモーターとは……」。ある自動車メーカー関係者は、ライバルの意外な提携に驚きをあらわにした。
ホンダは、日立オートモティブシステムズと電動車両用のモーターの開発・生産を担う合弁会社を設立する。
日立オートモティブは、日立製作所の子会社で、約1兆円の売上高を誇る大手部品サプライヤー。もともと日立は、同じ芙蓉グループである日産自動車との結び付きが強く、現在でも日立オートモティブの売上高の約3割は日産・仏ルノー向けが占める。そうした経緯から、ホンダと日立が系列を超えて、しかも、モーターという基幹部品でタッグを組むことに、驚きの声が上がったのだ。
モーターで提携する最大の狙いは、量産効果によるコストダウンだ。ホンダは、現在、モーターを全て内製しており、モーターの開発力にも自負がある。例えば、大同特殊鋼と開発した重希土類完全フリーモーターを新型「フリード」に採用するなど、新技術の導入にも積極的だ。
それでも、ホンダは調達戦略を大転換した。ホンダは2030年までに販売台数の3分の2を電動化対応車にする目標を掲げる。モーターのさらなる増産は必須だが、単独で設備投資をするのは、大きな負担になる。そこで、「量産技術を持つ日立と提携することで競争力のあるモーターを作りたい」(八郷隆弘・ホンダ社長)というわけだ。今回の合弁会社で生産するモーターは、ホンダにとどまらず外販することを視野に入れている。競合他社にも供給が進めば、大きなスケールメリットを手にすることができるのだ。
現在、日立オートモティブは、米ゼネラル・モーターズ(GM)にモーターを供給しており、そのGMとホンダは燃料電池車での協業を行っている。「そうした3社の関係性から今回の提携につながったのではないか」と、佃モビリティ総研の佃義夫代表は推察する。