トランプ大統領とフリン中将の後任の安全保障担当の大統領補佐官になったマクマスター中将 Photo:The New York Times/AFLO

 昨年の米大統領選挙戦のさなか、親露的なドナルド・トランプ候補の当選を期待したロシアが、米国の民主党全国委員会などにサイバー攻撃をかけて同党のヒラリー・クリントン候補に不都合な情報を収集、それをインターネットで流すなどして、クリントン女史への米国民の信頼感を損なう工作を行っていたとされる事件は世界の情報戦史上で最大級の謀略と言えよう。

米大統領選に介入の異常
トランプ参謀、ロシアと接触

 自国と親密な人物に肩入れし、選挙に介入して米国大統領の座に据えることができれば、ロシアにとりこれ以上の情報戦での成功はない。スパイ行為で精密情報を取るよりはるかに壮大で有効な工作だ。

 他人のコンピューターに侵入して情報を窃取、それを利用する行為は犯罪で、それにより外国が選挙に介入するのはもっての外だ。CIA(中央情報庁)、FBI(連邦捜査局)、NSA(国家安全保障局)が得意のサイバー戦や盗聴などでその証拠をつかんだが、犯人は外交官だから訴追はできず、昨年12月29日にオバマ政権はロシア大使館とサンフランシスコ総領事館のロシア外交官35人を「好ましからざる人物」として国外退去させ、情報収集拠点2ヵ所を閉鎖した。

 この際トランプ大統領の安全保障問題担当の補佐官となることが決まっていたマイケル・フリン(退役)中将はセルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使と数回電話で話し「政権交代後に国外退去は取り消すから、ロシアは報復措置として米外交官の追放をして大問題にしない方がよい」と助言したとされる。国外退去命令に対しては、同等の報復措置を取るのが一般的で、ロシアもその構えを示したが、この助言を受け容れたのか、報復措置は取らなかった。

 FBIを管轄する司法省はトランプ大統領就任後の1月26日、大統領府にフリン中将とロシア大使の通話の内容を報告「機密保全上の問題がある」と伝えたが、トランプ大統領は特に措置を取らず、2月13日にワシントンポスト紙がこれを報じたため、やむなく彼を辞任させた。ロシア大使との電話は新政権発足の前だから「私人が許可なく外国と協議したのは違法」との理由だが、これはこじ付けたような理屈で、トランプ大統領自身も就任前の昨年11月18日に安倍首相と会談し、日米関係を話し合った。