2月10日から日米首脳会談が始まる。これまでトランプ大統領は日米の貿易不均衡の問題を取り上げ、ツイッターなどで日本の自動車メーカーを批判しており、これからも日本にアメリカ車の輸入を迫ると見られている。日本の自動車メーカーの経営陣にとっては、かつての日米貿易摩擦を彷彿させるような悪夢だ。もっとも、トランプ大統領がいくら恫喝したとしても、今さらアメリカ車が日本では売れると本気で思っている人は少ない。(ジャ-ナリスト 井元康一郎)

トランプ大統領に
翻弄される日本の自動車業界

「アメリカでは日本車が大量に走っているのに、日本ではアメリカ車はほとんど走っていない。不公平だ」――。

 ドナルド・トランプ大統領のこの文言に、日本の自動車業界は翻弄されている。

 日本側からは当然反論が噴出している。アメリカは自動車輸入に関税をかけているのに、日本はかけていない。アメリカで販売されている日本車の多くはアメリカで生産され、経済活性化や雇用創出に貢献している、等々。メーカー各社の首脳は決算会見などの席上で、「日米首脳会談でトランプ大統領にそのことを理解してもらえることを期待する」という趣旨の発言を行っている。

 自動車貿易で、日本側が不利なことこそあれアメリカ側にはないというのは至極正論だ。また、日本とアメリカでは国情があまりにも違いすぎ、アメリカ車が合わないというのも事実だ。だが、それを主張してトランプ大統領の理解を得ようというのは、いかにも外交下手の日本らしい、きわめて有効性の薄いやり方だ。

 世界各国のメディアがアンチトランプキャンペーンを張っている影響か、トランプ大統領はそういったバックグラウンドも知らないままモノを言っていると本気で信じている人が多い。大手新聞の社説でもそういう論調のものが日々出ている。