資金ゼロからのスポンサー探し
エベレストをはじめとする山に登るためにも、山がある国まで遠征するためにも、資金は必要です。「今週は学校から帰ってきたら1時間スポンサー探しをする」というように計画を立て、高校3年生の夏休みから本格的に企業へのアプローチを開始しました。
「スポンサー集めはけっこう苦労したでしょう」と心配そうに言ってくれる人。
「じつはコネがあったんでしょう」とわかったような顔で言ってくる人。
あとから、いろいろなことを言われましたが、実際のところコネもありませんでしたが、苦労とは感じませんでした。全部自分で働きかけたことなので、「すべて起こるべくして起きた!」という思いもあります。
まずはアウトドア用品のメーカーやマスコミをインターネットで検索し、メールを送ったり電話をしたりしました。すぐに話を聞いてくれたのが、1921年創業のフランスのアウトドア用品メーカーMILLET(ミレー)。「素晴らしい計画だし、ぜひ応援したい」という言葉とともに、ザックやシューズなど、必要な登山グッズを提供してくださいました。
ニュースになれば向こうから見つけてもらえるかもしれないと、大手新聞社をすべて検索しました。すぐに記者につながれるわけもなく、メールアドレスが書いてあるのはカスタマーサービスのようなところ。それでもかまわず、新聞社にメールを出しました。
「私は高校3年生の南谷真鈴と申します。日本人最年少でのエベレスト登頂を目指しています。その準備として、まずはアルゼンチンのアコンカグアに登ろうとしています。私のことを、記事にしてくださいませんか」
自己紹介とプランをまとめて送信。それで連絡をくれたのが、東京新聞と読売新聞でした。
「南谷真鈴さんですか? ぜひ、取材させてください」
授業中に電話がかかってきて驚きましたが、記事にしてもらうことができました。特に東京新聞は、2014年12月16日の夕刊1面に、「エベレストへ女子高生挑む」という大きな記事を載せてくれたのです。
すると、その記事を読んだおばあさまが新聞社に電話をかけてこられたそうです。
「南谷さんの口座番号を教えてください。私は登山好きだったけれど、歳がいってもう登れない。私の代わりに、山の頂上を見てきてほしい」
その後、七大陸最高峰を目指すことにした時や、エベレスト登頂を果たした時など、何度か新聞に取材してもらいましたが、読者から「寄付をする」という申し出をいただいたのは、初めて記事になったあの時だけです。
何ももたない高校生の女の子が、1人でアコンカグアに登ろうとしている。やがてはエベレストを目指そうとしている……。その事実だけが、おばあさまの心を動かしたのだと思います。本当にありがたく、感謝の気持ちしかありません。