異次元金融緩和策を日本銀行はどのように収束させるのか。
出口政策の詳細や、それに基づく収益シミュレーションの公表を日銀は拒んできた。「出口の議論を行うと緩和策の効果が低下する。時期尚早だ」という考えがその背景にある。しかし、「気合」が殺がれるからといって、将来何が起こり得るかについて客観的かつ冷静な分析を避け続けていたら、第2次世界大戦中の日本軍と同じ過ちを犯してしまう恐れがある。
4年前に日銀が開始した異次元緩和策は、2年でインフレ率を2%にすることを狙っていた。そのもくろみは崩れ、日銀が現在掲げている「インフレ率が安定的に2%を上回る状態」が実現する時期は見えてこない状況だ。そのため、日銀のバランスシートは海外の主要中央銀行には見られないほどの異様な膨張を今後も続ける。
対照的に米連邦準備制度理事会(FRB)は、量的緩和策(QE)の開始から2年半程度で出口政策に関する最初の基本方針を発表。その後、量的緩和策第3弾(QE3)の開始直後(2012年12月)に出口政策時の収益シミュレーションを公表した。QE3は、証券購入を停止する時期を定めず、米経済が望ましい状況になるまでそれを継続するという「オープンエンド式」の政策だった。
当時のベン・バーナンキFRB議長は後に出版した自伝の中で、その決断をポーカーの「オールイン」に例えていた。経済効果が表れなかったら、FRBの証券購入策は止まらなくなってしまう。バーナンキ氏にとっては、有り金全部を賭けたような心境だった。