日本経済は、2012年12月以降52ヵ月続けて回復を続けている。これは1965年10月から1970年7月(第6循環〈いざなぎ景気〉、57ヵ月)、2002年1月から2008年2月(第14循環、73ヵ月)に次ぐ、戦後3番目に長い景気回復だ。“アベノミクス景気”とも呼ばれる今回の回復に関しては、積極的な金融緩和策が重要な役割を果たしてきた。ただ、多くの人の“肌感覚”では景気回復を実感しづらいのが実情だろう。

消費増税を境に消費マイナス
可処分所得も2年連続減少

 2013年4月以降、日本銀行は短期間でのデフレ脱却をめざし、非伝統的な金融緩和を積極的に進めた。これが円安圧力を高め、輸出を中心とする企業収益をかさ上げし株価上昇につながった。また、円安の追い風を受けた企業業績の回復と、“官製春闘”と呼ばれる賃上げへの官邸の積極的な関与もあり、2014年から3年続けて給与の上昇=ベアが実現したことも相応のプラス要因になった。

 だが特に、2014年4月の消費税率引き上げは大きな影響を与えた。5%から8%に税率が引き上げられ消費を手控える人が増えた。総務省が公表する家計調査報告では、消費増税を境に二人以上の世帯の消費支出は前年同期比ベースでおおむねマイナス圏で推移している。

 ベア実施にもかかわらず、実質ベースの可処分所得も増えていない。2014年は3.7%減、15年は0.2%減と2年続けて可処分所得は減少した。これは、大都市、大企業中心に回復が進んだものの、その恩恵が広い範囲に行き渡っていないことを物語っている。これが過去3番目の景気回復の割には、実体経済の盛り上がりに欠けるといわれるゆえんだ。