逃したチャンスは二度と巡ってこない
これが、見事に当たりました。
いえ、予想をはるかに超える成功を収めたのです。開店初日から行列ができて、店頭に並べた靴は片っ端から売れていきました。価格帯、品質ともに、私の「読み」どおりにシンガポールのマーケットにはまったのです。
日本式のディスプレイを採用したのも勝因のひとつでした。当時、現地の靴店はどこも、ガラスのショーケースのなかに靴を陳列(ちんれつ)していましたから、いちいち店員に「あの靴を見せてほしい」と頼む必要がありました。しかし、私たちは、棚に靴を並べる日本式を採用したので、誰でも自由に試し履きができる。これも、好評を博したのです。
しかも、利幅(りはば)が非常によかった。というのは、日本との“時差”があるからです。日本のデパートでは7月には夏物のバーゲンが始まります。メーカーも初夏には秋冬の商品の準備を始めるので、夏用の靴は6月中旬を過ぎると問屋では値段が下がり始め、7月には“投げ売り”状態になります。
それをゴソッと仕入れてシンガポールへ輸出しますから、粗利益率は80~90%。開店3ヶ月後には配当が出るようになりました。その後、5年間で5店舗を出店。膨大(ぼうだい)な利益を生み出してくれたのです。まさに、ハイリスク・ハイリターン。そして、このとき手にした資金が、私の「軍資金」となったのです。
もう、説明は不要でしょう。成功したければ、チャンスが来たら迷わず飛び乗ることです。チャンスの女神に後ろ髪はない、と言われるとおり、訪れたチャンスは瞬時につかまえなければ、すぐに過ぎ去ってしまいます。そして、二度と戻ってはこないのです。だから、「これは!」というチャンスがあれば、四の五の言わずにまず飛び乗る。そして、全力を尽くす。これが、成功をたぐりよせる、第一の秘訣なのです。