政府は9日の閣議で、予算編成の基本方針である「骨太方針2017」に、財政健全化目標として、現在の2020年度までにプライマリーバランス(基礎的財政収支、PB)を黒字化する目標と並んで、「債務残高GDP比」の安定的引き下げを追加することを決める。
新たにこれを健全化目標目として加えることの意図は、明白である。「PB黒字化目標は達成できないかもしれないが、債務残高GDP比を引き下げることには成功している」と言いたいためである。現に2016年度以降、この比率はわずかながら下がっている。
“健全化”が易きに流れ、本当の財政再建がまた遠のくのではないかと心配だ。
新健全化目標のマジック
歳出削減しなくても達成できる
政府はこれまで財政再建のシナリオとして、2020年度までに、毎年度の国債の償還や利払い費の範囲で、国債を発行し、国債関連以外の政策的経費は、税収などの歳入で賄うよう、基礎的収支(PB)を均衡させる目標を掲げてきた。1年前の「骨太2016」では、PBを2020年度までに黒字化し、「その後の債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す」と、記されていた。
だが、今年1月には、内閣府が 「2020年度PB黒字化」目標の達成には、消費税率を10%に引き上げたとしても、さらに歳入が8.3兆円不足する(アベノミクスが成功した場合)という試算を、出している。目標を達成するにはさらなる消費増税が必要になるということが明白な中で、新たな健全化目標が追加された。