「商材」としての藤井四段

 藤井四段の新記録達成の翌日、朝刊各紙の扱いは、ほぼ一面のトップ扱いだった。藤井四段が、若い頃の羽生善治氏のような、将棋人気を膨らませるスターになってくれる可能性は大きい。

 昨年、三浦九段の不正疑惑問題(後に「シロ」が判明)を正しく処理し損なってイメージを悪化させた日本将棋連盟にとって、藤井四段の存在は大きな回復と成長のチャンスだ。

 日本将棋連盟にとって大切なことは、「プロ棋士」対「プロ棋士」、つまり「人間」対「人間」の戦いを、“商品”として効果的にマーケティングすることだろう。

 将棋は、野球ほどではないとしても、ルールを分かっている人が多く、直感的に分かりやすいゲームだ(形勢が接近した囲碁の目算はアマチュア高段者でないとできないが、将棋の「王手」や「詰め」は直感的に分かりやすい)。

 たとえるなら、将棋は「(持将棋を除いて)KO以外に決着のない、頭脳のボクシング」だろうか。将棋が分かる人にとって、リアルタイムで進行するプロ棋士同士の将棋が面白くないはずはない。

 一方、将棋がいかに面白いとはいえ、現代にあって多くの将棋ファンをテレビの前に何時間も座らせておくことは難しい。また、若い世代になるほど紙の新聞は読まない。そして、多くの現代人にとって情報と楽しみの窓口はスマートフォンだ。

 幸運なことに、盤面が9×9の将棋は、スマートフォンの小さな画面と相性がいい。

 日本将棋連盟は、今後、ファンに将棋を楽しんでもらうチャンネルの主力が、紙の新聞ではなくスマートフォンになることを想定し、プロ将棋のモバイル中継のビジネスを大幅に強化する必要があるのではないだろうか。

 筆者個人にとっては大変ありがたいのだが、スマートフォンのアプリで現在進行中の将棋を1日に何局もほぼリアルタイムで見られる「将棋連盟モバイル中継」の1ヵ月当たり500円はいかにも安い。