古き良き建築物を残しながら
最新のビューポイントを開発

 一方、その対極とも言える都市再開発の成功例もある。「上海新天地」だ。

 淮海路から馬当路に曲がって少し歩くと、グレーのレンガ造りの石庫門建築が目に飛び込んでくる。石庫門とは、宋代から伝わる中国の世界観「天人合一(天と人は理を媒介にして1つにつながっているという考え)」と、イギリスのアパートの効率の良さと安全性とをミックスさせたような、いいとこ取り住宅だ。

 1990年代の上海では、4分の3の住民が石庫門建築に住んでいると言われるほど、ポピュラーな存在だった。上海には、「石庫門」というブランドの紹興酒があることを考えれば、石庫門が上海文化を形作る重要な要素となっていることは自明と言える。

 上海新天地は、伝統的な住宅地を更地にする「解体型」の都市再開発とは異なり、その石庫門建築の形をそのまま残して中身を一新する開発方法を採用した。

 懐かしさが漂う外観とは打って変わって、その中身は高級感漂うバーやカフェ、海外アーティストが演奏するライブハウス、画廊やヘアーサロンまでひしめき合う。古くて新しい新天地は、ファッショナブルな存在として、地元の上海市民だけでなく、上海を訪れた世界の人々を虜にし、「絶対必見!」と勧められる新たなビューポイントになっている。

「新天地」というネーミングもなかなかユニークだ。実は、新天地の中心には中国共産党第一回大会が開かれた「一大会址」がある。それにちなんで、「一」+「大」=「天」、天があるならそれに相対する「地」が必要、そしてこの天地は昔とは違うから「新」をつけて「上海新天地」。政治的な配慮も上手に盛り込んでいるというわけだ。