生命保険はわれわれにとって身近な金融商品だが、筆者はこれまで、生命保険に対して好意的な記事を書いた記憶がない。その最大の理由は、生命保険の商品に「透明性」がないからだ。

 生命保険は、商品の価値評価が極度に難しい商品であるにもかかわらず、たとえば投資信託並みの手数料開示を行っていない。

 金融商品としての生命保険を理解するうえでのキーワードを一つだけ挙げるなら「付加保険料」だろう。契約者が支払う保険料は、保障や貯蓄に必要だと計算された「純保険料」と、保険のセールスコストや保険会社の維持費用など保険そのものには使われない経費や保険会社の利益に相当する費用に充てる付加保険料で構成されている。付加保険料は投信でいうと、販売手数料や信託報酬など、顧客が支払う手数料に相当する。

 投信の場合、自分が払ったおカネのうちいくらが投資運用に振り向けられるのかは、手数料を見るとわかるが、生命保険会社は、ライフネット生命保険以外は付加保険料を開示していない。

 また、死亡保障の保険であれば余命に関する確率、医療保障の保険であれば対象とする病気の罹患率など、純保険料計算の基礎になる確率に関して、生保各社は、独自のデータを使っている。この事情は、岩瀬大輔氏の『生命保険のカラクリ』(文春新書)でも触れられているが、生保各社の決算を見たときの「死差益」(商品の想定確率と実際の契約者の生死の差から生じる利益)の大きさから見て、そうとうに生命保険会社側が余裕を持った数字を使っているようだ。

 加えて、生保各社の商品の多くは、多様な特約がセットになっていて、価格の横比較が難しい。そして、この複雑な特約が保険金の不払い問題の大きな原因になったこともまだ記憶に新しい。