日本銀行が黒田東彦総裁体制に変わり、4月4日の金融政策決定会合の結果を受けて、円安と株高が一段と進んだ。少し長い目で見た今後の展開を考えてみよう。
会合後の記者会見で、黒田総裁は、株式のETFに関する質問に対する答えの中で、「リスクプレミアムはまだまだ圧縮する余地がある」と語った。リスクプレミアムは株価と一対一対応しているから、この発言は、現在の株価が安過ぎると述べているのと同じだ。
アベノミクスにあって、特にその初期には、為替レート(円安)と資産価格が果たす役割は大きい。日銀と政府は、円安と株高を実現することを通じて景気を拡大し、ひいては物価上昇につなげようとする意図を明確に持っている。
株価は、日経平均で1万3000円台に乗せたが、筆者は、現時点でこの水準の株価を「バブル」だとは思っていない。また、これから行われようとしている金融緩和政策は、現時点で適切だと思う。
一方で、現状の日本経済が、バブルの立ち上がり時期だった1986年ごろによく似ている。
85年のプラザ合意に伴う大幅円高の影響を引きずり、86年は景気がさえなかったが、4度の公定歩合引き下げなどの金融緩和を受けて、株価は4割以上上昇した。翌87年には、米国でブラックマンデーと呼ばれた株価の大暴落が起こり、世界経済に与える影響に配慮して87年、88年には金融引き締めが行われず、この間に日本経済はバブル本番を迎える。
不況、金融緩和、株高、というここまでの流れも似ているが、今後、物価が「2%」の目標に達しないと金融引き締めは(少なくとも利上げは)ないだろうと見通せる点で、現在の状況は、近未来まで含めて86年と似ている。
加えて、今の日銀は(政府も)、明白に株高を目指している。
日銀が目指すリスクプレミアムの圧縮がどれくらいの大きさのものなのかはわからないが、仮に2%の圧縮だとすると、記者会見前日(4月3日、日経平均は1万2362円)のデータを使って計算するなら、2万1691円、PER(株価収益率)では37.7倍と計算できる。日銀は、1年ないし、1年半くらいの期間をかけて、このくらいの株価を目指しているのではないか。