原油相場が緩やかながら上昇を続けている。国際指標である欧州北海産のブレント原油は、1バレル当たり60ドルに迫り、約2年ぶりの高値となっている。米国産のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は同52ドルを上回り、4月以来の高値を付けている。

 8月下旬は、ハリケーン「ハービー」が米国に上陸する中、メキシコ湾岸の製油所が多数、操業停止に陥り、原油需要が減退するとの懸念から、原油相場は下落した。

 しかし、9月上旬には、米製油所が操業を再開する中で、原油在庫の積み上がりに対する懸念が後退し、原油相場は大幅に反発した。その後、ハリケーン「イルマ」が米南東部に接近し、再び原油需要が大きな打撃を受けるとの懸念が強まる局面もあったが、被害は危惧されたほどには広がらなかった。

 9月10日にサウジアラビアとベネズエラおよびカザフスタンの石油相が2018年3月以降の協調減産の延長について協議し、11日にサウジとアラブ首長国連邦が、今後、協調減産の延長を検討する可能性があるとの認識で一致するなどの産油国動向も、原油相場の支援材料になった。

 また、OPEC(石油輸出国機構)やIEA(国際エネルギー機関)がそれぞれの月報で、原油需要見通しを上方修正したことも、強気の材料になった。

 22日には、OPEC加盟国・非加盟国が産油国の協調減産の実施状況を点検する合同閣僚監視委員会を開催したが、協調減産の延長をOPECなどに勧告することは見送られた。ロシアのノバク・エネルギー相は「状況を見極めるため、早くても18年1月までは決定しない」との見通しを示した。

 一部の原油市場参加者には、減産延長の方針が示されるとの期待があったようだが、期待外れとなっても、世界的な原油需要の増加観測を背景に原油相場は底堅い推移を続けた。同委員会で、産油国の減産順守率が116%と高水準に達したことや、OECD(経済協力開発機構)加盟国の石油在庫が過去5年平均を1.7億バレル上回る水準まで減少したことが報告され、相場の支援材料になった。

 足元の原油相場は、需要増加観測などを背景に、上向く力の方が強い状況である。しかし、米国産のWTIは上昇力に乏しい。ハリケーンの影響が残っているからだ。

 米国ではハリケーンの影響により、原油生産・原油処理の双方が落ち込んだが、ハリケーン通過後に原油生産量は急速に回復したのに対し、原油処理量は製油所がダメージを負い、回復にやや時間がかかっている。このため、ブレントとWTIの価格差は、7ドル前後と約2年ぶりの水準に拡大しており、当面、高止まりが続きそうだ。