中国経済の減速が鮮明になってきた。10月18日に発表された7~9月期のGDP成長率(前年同期比)は9.1%と、4~6月期の9.5%から鈍化した。これで3四半期連続の伸び率鈍化となった。
主因は、欧米経済の失速の影響だ。9月の輸出伸び率は、前月の24.5%から17.1%に低下した。特に最大の輸出先であるEU向けは、8月の22.3%に対し9月は9.8%と減速が著しい。米国向けも11.6%で、5月以降低調が続いている。
欧州や米国に比べればはるかに穏やかな減速とは言え、楽観はできない。問題は、「政府当局は、インフレの深刻化と景気減速懸念のあいだで、身動きが取れない」(柯隆・富士通総研経済研究所主席研究員)ことだ。
9月の消費者物価上昇率(CPI・前年比)は6.1%で、8月の6.2%からやや低下したものの、「多くの食品や生活必需品が高過ぎる状況が続いており、北京や上海では、一部の魚など日本より高いものすらある」(柯主席研究員)。
一方で、インフレ抑制のための金融引き締めは、中小企業を直撃している。連続する銀行の預金準備率引き上げと窓口指導による貸し出しの減少で、中小企業は深刻な“貸し渋り”に直面、資金繰りに窮した中小企業は、「民間金融」、つまりは非正規の高利貸しに頼らざるを得なくなった。
浙江省温州市では年利20%以上、一部では180%にもなる金利での貸し付けが横行し、経営者の夜逃げが相次いでいることが現地で報じられたが、問題は浙江省にとどまらない。柯主席研究員によれば、上海でも民間金融の金利が60%に及んでいるという。
この状態でさらなる引き締めを行えば、中小企業はますます厳しくなる。
10月3、4日には、温家宝首相が国慶節の連休中に浙江省を視察。12日には、銀行に対する中小企業向け融資拡大促進、信用枠の拡大、減免税などの対策を打ち出した。中小企業の苦境は、「マクロ経済へのインパクトは限定的でも、雇用の悪化を通じて、社会不安につながりかねない」(萩原陽子・三菱東京UFJ銀行経済調査室調査役)だけに、当局としても放置できなくなった格好だ。