有権者に判断材料や
議論の場を提供

 ただ、この10年を振り返れば、別に私たちは、特別のことを行ってきたのではなく、当たり前のことに取り組んだだけに過ぎない。ここで言う、当たり前のこととは、本来、民主政治とは有権者が政策を判断して自らの代表を選ぶもので、政治家にただお任せするものではない、ということである。

 そうした有権者に、自ら考えるための判断材料や議論の場を、提供しようとしたのが、私たちの主な仕事だった。

 7年前、他に先駆けて政党のマニフェストや政府の政策の実行に関する評価や議論を公開した。それ以来、定期的にこれらの評価を続けているのも、そのためである。

 そして6年前からは、中国との対話に取り組み、民間の新しい本気の対話のチャネルをつくりあげた。私たちの議論づくりが国境を越えたのは、両国民間の相互理解を進めるには、「対話の力」しかない、と考えたからだ。

 当時、日本と中国という2つの大国は政府間の対立が深刻化し、中国ではデモが多発し、国民間の感情悪化が加速した。誰かがこの状況を変えないと、大変な状況になりかねなかった。

 もちろん、こうした事業がこの10年で成功したのか、といえば十分だとは思っていない。ただ、この10年で私にもはっきりと分かったことがある。

 それはこの国の民主主義の不安定さであり、「危うさ」である。

野田首相の気になる発言

 野田政権は12月10日で、政権の運営を始めてから100日が経過した。ハネムーン期間の100日後から、私たちは毎回、政権の評価を始めるが、この間の発言で特に気になったのが、野田首相がある経営者の集まりの講演で使った、「捨て石になる」という言葉である。