極めつけは、米国「リレーライズ」である。同社は、車で空港に乗りつけ、そのまま出張に行く客の車を、その空港から町へ出たい客へレンタカーとして貸し出す。出張客にとっては、駐車料金を払わずに、逆にレンタルフィーを受け取るという画期的な仕組みをつくり上げた。リレーライズは、“車を保有しないレンタカー会社”と言え、大手のハーツ、エイビスもこのコスト構造には太刀打ちできない。

 このように、自社に資産がなくてもマッチングビジネスは始められる。多額の固定費を投じてサンクコスト(埋没費用)となっている固定資産に目をつけ、それを必要とする人とマッチングするシェアリングビジネスは、今後ますます増えて行こう(後述するラクスルは、この側面も持っている)。

顧客のメリットを高めながら
低コスト構造をつくる「5つの方法」

 今や古典的事例に入るが、ヤマト運輸では配達の時間指定を行うことで、顧客が荷物を受け取れる確率が高くなると同時に、ヤマトの不在配達コストを減らすことに成功した。さらに最近では「クロネコメンバーズWebサービス」で、受け取り側の時間指定も簡単にでき、「不在のコスト」をゼロに近づける努力をしている。このように、顧客のメリットを高めながら、企業がコストを下げられる方法が最も望ましいと言える。

 2017年8月にKDDIの傘下に入ったデータ通信サービスのソラコムは、初期費用はSIMカードが1枚954円、基本料金は1日10円、データ通信料は1メガで0.2円という超低価格のIoT通信を提供してきた。同社は、他のMVNO業者(仮想移動体通信事業者)が専用のハード機器を設置しているシステムを、すべてクラウド上のソフトウェアに置き換えた。それによって自社は驚異的な低コスト構造をつくり、顧客には通信速度や設定を自由に変えられる便利さを提供したのである。

 ケース研究をまとめると、低コスト構造をつくる方法として、(1)やらない、(2)持たない、(3)顧客にやってもらう、(4)仕組みを変える、(5)固定費を変動費化するなどが挙げられる(詳細は拙著を参照)。これらは、従来のコストダウンの手法とは違う発想が求められる。