もしも、当時は未熟であったからその後勉強して方針転換したと言うなら、この十数年間の政治生活で税金を受け取って何をしていたのか。「税金を返せ」と言われかねない。

 また、街頭演説が選挙の方便としての発言ならば、投票した人から「票を返せ」と言われても仕方がない。

 この一件は、どんなに弁明しようとしても弁明できないもの。弁明すればするほど信頼が地に墜ちるだろう。

“退陣”か“本来の約束”を守るか――
野田首相に残された道は2つのみ

 野田首相にはこれに処する2つの道がある。

 その1つは、政治不信の増幅に歯止めをかけるため退陣すること。行政改革を小手先で済ませて消費税増税に走るのは止むを得ないと本当に考えているのなら、そもそも首相になるべきではなかった。

 もう1つは、本欄で指摘してきた正道に思い切って転換すること。すなわち、ユーチューブでの約束通りに進むことだ。

 野田首相は、“素志貫徹”を座右の銘にしているらしい。

 “素志”とは、人生の原体験に育まれ、変えようとしても変えることのできないほど強固な志のことだろう。首相が本気でこの言葉を大切にしているなら、こんなことには決してならないはずだ。

 “素志”という言葉が泣いているではないか。


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