国税最強部門、「資料調査課」(税務署では調査できない困難案件、例えば、悪質、海外、宗教事案などを扱う部署)出身であり、タックスヘイブンの実情を描いた『税金亡命』の著者でもある佐藤氏が、免税を利用した脱税行為について語る。
「免税」を利用した脱税行為とは?
前回は密輸による金塊脱税の話を書いた。
スキームは比較的単純だが、ともかく輸入しなければいけないので、税関監視のリスクだけでなく金塊そのものの盗難・紛失のリスクが伴う。
昨年あたりから金塊密輸の摘発増加と関連ニュースの報道によって、税関当局の監視が厳しくなっているのは間違いない。空港内に貼られている密輸撲滅ポスターの数が証左といえよう。
ところで、金塊脱税は密輸だけではない。
中国の旧正月や国慶節になると、来日した中国人の爆買いがニュースになるようになって久しい。爆買いしている店は、いわゆる「Dutyfree」ショップである。消費税法の用語でいうと、「輸出物品販売場」(消費税法第8条)となり、諸要件を満たしたうえで所轄税務署長の許可を受ければ、非居住者に対して消費税を「免税」で商品販売することができる。
銀座や秋葉原に行くと簡単に見られる光景だが、外国人観光客がパスポートをレジに出して商品を購入している場面に出くわす。輸出物品販売場で免税で売るためには、
(1)外国人観光客からパスポートの提示を受ける
(2)購入記録票の作成
(3)購入者誓約書の作成
(4)購入記録票を外国人観光客のパスポートに貼付
(5)購入者誓約書等を販売店で保存
これらの手続きを踏む必要がある。これは、不正手段による免税販売を防止するための手続きといえる。外国人観光客は、日本出国の際、商品を外国に免税に持ち出す(母国に持って帰る)には、出国時にパスポートに貼付された購入記録票がないと消費税を徴税されることになっている。
爆買いと金塊脱税のどこが関係するのか?そう、外国人観光客に「買ってもらったことにして」免税販売にするのである。免税で販売したことにすると、仕入にかかった消費税を確定申告で税額控除、つまり「不正還付」を受ける事ができるわけだ。