自民党議員も関与!?
「免税」を利用した脱税行為

 金・白金の地金も過去は免税取引が可能だったのだが、平成28年4月1日以後の販売については免税扱いから除かれることになったので今はダメ。

 しかしながら、輸出物品販売場での不正スキームは、「高額商品」ならば何でもいいので、金製品(純度は低い)でも数をこなせば同様の効果を得ることができる。

 ちなみに、外国人観光客でなくても、外国に滞在している日本人ならば免税で購入可能である。物品税(奢侈品・嗜好品など、特定の物品を対象として課される間接税。平成元年の消費税の導入に伴い廃止)の時代は、低価格販売で同業他社に勝つために不正処理をしていた業者が散見されたが、消費税免税店の不正はロットが違いすぎる。新聞によると、約70億円の不正還付事件があったと報じられ、現在は係争中のようである。

 疑問が出てくるかもしれない。それは、「パスポートに貼付された購入記録票は出国の時に問題にならないのか」「外国人関係者が買ったとされる商品はどうなったのか」といったこと。購入記録票は、そもそも販売時に貼らなければいいし、商品は外国人観光客には引き渡していないようである。

 今年の1月に報道されたので記憶があるかも知れないが、自民党の政治家秘書が国税庁幹部を議員会館に呼び出し、自身が顧問を務める会社と関係のある免税店運営会社4社に対する税務調査についての説明を求めていた。

 国税庁への圧力ともとれる。このケースは金製品ではなく、宝石を外国人観光客に売ったことにしていたようだ。

佐藤弘幸(さとう・ひろゆき)
1967年生まれ。東京国税局課税第一部課税総括課、同部統括国税実査官(情報担当)、電子商取引専門調査チーム、課税第二部資料調査第二課、同部第三課に勤務。主として大口、悪質、困難、海外、宗教、電子商取引事案の税務調査を担当。退官までの4年間は、大型不正事案の企画・立案に従事した。2011年、東京国税局主査で退官。現在、税理士。他の著作に「国税局資料調査課」(扶桑社)がある。国税局課税部資料調査課(機能別に派生して設置した統括国税実査官を含む)は、税務署では調査できない困難事案を取り扱う部署である。資料情報及び決算申告の各係数から調査事案を選定、実地調査する。税務署の一般調査と異なり、「クロ」をターゲットにしているので、証拠隠滅や関係者との虚偽通謀を回避する必要があり、原則として無予告で調査を行う。